中小企業のホームページについて調べていると、載せるべき要素の一覧が並んだページによく行き当たります。会社概要、事業内容、実績、お客様の声、代表挨拶、アクセス、問い合わせフォーム。どれも間違いではありません。ただ、その一覧のとおりに作ったサイトから問い合わせが来ているかというと、来ていない会社のほうが多いのが実情です。
合同会社謙虚は、中小企業のウェブサイトから要素を引き算して、訪れた人が迷わず次の一歩へ進む形へ組み直す仕事をしています。自社でも同じことを検証するために記事を書き続けていて、その過程で、載せる要素を増やしても問い合わせは増えないという結果を自分たちのデータで確かめました。
この記事では、中小企業のホームページで問い合わせが生まれない原因を3つに分け、そのうちどれに当てはまるかを1時間で判定する手順までをお伝えします。作る前でも、すでにある場合でも、順番は同じです。
結論:中小企業のホームページで結果を決めるのは、作る前の10秒です
先に結論をお伝えします。中小企業のホームページから問い合わせが来るかどうかは、デザインでも、ページ数でも、更新頻度でもありません。そのサイトが狙っている言葉を、実際に検索している人がいるかどうかです。
これは精神論ではなく、自社で数えた結果です。
3つのドメインで、狙う言葉の選び方だけを変えて測りました
合同会社謙虚は、3つのドメインを検証のために並行して運用しています。書いているのは同じ人間で、記事の作り方も公開の頻度も同じです。変えているのは、狙う言葉の選び方だけです。片方は自社が伝えたいことから、もう片方は実際に検索されている言葉から選びました。
数字を見て最初に疑うのは、順位が低いのではないかということでした。調べると、検索結果の10位以内に入っている記事が43本ありました。順位は取れていました。
次に疑ったのは、表示されてもクリックされていないのではないかということでした。クリック率は4.7%でした。これは業界の平均的な水準で、悪くありません。
差が出たのは1か所だけでした。表示回数です。自社が伝えたいことから選んだ側は、10位以内に入った記事でも1本あたり28日間で2.0回。ほとんど誰の画面にも出ていませんでした。
検索されている言葉から選んだ側は、同じ28日間で46.2回でした。23倍の差です。書き方も、書いている人間も、公開の頻度も同じです。違ったのは、狙った言葉だけでした。
誰も検索していない言葉で、1位を取っていました
上位に入っていた記事の狙っていた言葉を、1つずつ確かめました。「お客様の声 怪しい」。検索候補は0件でした。「企業理念 配置」。これも0件でした。
どちらも、書いた本人からすれば意味のある切り口です。実際に相談の場でよく出る話でもあります。ただ、その言葉を検索窓に打ち込む人はいませんでした。
中小企業のホームページで起きていることも、これと同じ構造です。自社が言いたいことを並べたページは作られていて、そのページは検索すれば出てきます。ただし、その言葉で検索する人がいません。
集客の全体像については、手法を増やしても集客が増えない理由でまとめています。
問い合わせが来ない原因は、3つのどれかです
ホームページから問い合わせが生まれるまでには、通り抜けなければならない場所が3つあります。詰まっているのは、必ずそのどれか1つです。
| 場所 | 詰まっている状態 | 数え方 |
|---|---|---|
| 1つ目:見つからない | そもそも人が来ていない | 月間のアクセス人数 |
| 2つ目:来ても分からない | 来た人が問い合わせページまで進まない | 問い合わせページの閲覧数 |
| 3つ目:来ても押せない | フォームまで来て送信されない | 送信完了の件数 |
この3つは、上から順に通ります。1つ目が詰まっているのに3つ目を直しても、通る人が増えていないので結果は変わりません。逆に、3つ目が詰まっているのに1つ目を広げると、来た人が同じ割合で漏れ続けます。
順番を間違えると、何が無駄になるか
よくあるのは、月に30人しか来ていないサイトのフォームを作り直すという打ち手です。フォームの改善で送信率が2倍になったとしても、元が0件なら0件のままです。
逆のほうがもっと多く、こちらは損失が大きくなります。人は月に3,000人来ているのに、問い合わせページを見ているのが12人という状態で、広告を出してアクセスを増やそうとする。入口を広げても、受け皿に穴が空いていれば同じ割合で漏れ続けます。広告費だけが増えます。
どこが詰まっているかは、1時間あれば分かります。記事の後半でその手順をお伝えします。
「見つからない」を、10秒で確かめる方法
3つのうち、中小企業のホームページでいちばん多く詰まっているのが1つ目です。そしてこれは、無料で、今すぐ、確かめられます。
使うのは検索窓の候補表示です。検索窓に言葉を打つと、その下に候補が並びます。あの候補は、実際にその言葉が打ち込まれた記録から作られています。候補が出ない言葉は、誰も打っていない言葉です。
候補の数の読み方は、3段階です
| 候補の数 | 意味 | どうするか |
|---|---|---|
| 0件 | 誰も打っていない | その言葉では書かない |
| 1〜2件 | 実在するが末端 | 単独のページにせず、別のページの見出しで拾う |
| 3件以上 | 下に広がりがある | ここを狙う |
境目を3件に置いているのには理由があります。完全一致の長い言葉を打つと、候補は自分自身の1件だけになることがあります。これを0件と同じに扱うと、実在する言葉まで捨ててしまいます。逆に1件を合格にすると、先ほどの「誰も検索していない言葉で1位を取る」状態へ戻ります。
実際に試してみてください。「中小企業 ホームページ」と打つと、候補が8件出ます。「中小企業 ホームページ 例」「中小企業 ホームページ 補助金」といった形で、下に広がりがあります。この言葉は狙う価値があります。
一方で「ホームページ 反響 ない」と打つと、候補は出ません。困っている人はいるはずなのに、その言い方では検索されていません。同じ悩みでも「ホームページ 問い合わせ 来ない」なら候補が出ます。言い回しを1つ変えるだけで、届く人数が変わります。
この確認にかかる時間は、1語あたり10秒です
記事を1本書くのに10時間かかるとします。その0.3%の手間で、その10時間が無駄になるかどうかが分かります。この10秒があるかないかで、23倍の差が生まれていました。
1つの文が決まらないと、全部がぼやけます
ここまで、言葉の選び方と要素の置き方をお伝えしてきました。ただ、その前に決めておかないと、どちらも決まらないものがあります。
1つの文です。自社は、誰の、どんな困りごとを、どうやって解決するのか。これが1文で言えないうちは、狙う言葉も決まりませんし、最初の画面に何を置くかも決まりません。
言えているつもりで、言えていない例
相談の場でこの質問をすると、返ってくる答えはだいたい次のどれかになります。
- 「お客様に寄り添った、丁寧な対応を心がけています」
- 「創業40年の実績と、確かな技術力です」
- 「幅広い業種のお客様に対応しています」
どれも本当のことだと思います。ただし、この3つはすべて、同業のどの会社が言っても成立します。読んだ人は、自社と他社を区別できません。
3つ目は、特に危険です。幅広く対応できることは強みですが、そう書いた瞬間に、誰の困りごとにも当てはまらない文になります。広く書くほど、誰にも刺さらなくなります。
1文を作る手順
頭の中で考えても出てきません。過去の実際の取引から取り出します。
直近で、いちばんうまくいった取引を3つ思い出してください。うまくいったというのは、金額が大きかったという意味ではなく、相手に喜ばれて、自社も無理なく進められた取引です。
その3つについて、次を書き出します。
- 相手はどんな会社で、どんな立場の人だったか
- 相談してきた時点で、何に困っていたか
- 自社が何をして、その後どうなったか
3つ並べると、共通点が浮かびます。その共通点が、自社の1文です。頭で考えた理想像ではなく、実際にうまくいった取引から取り出しているので、書いた瞬間から検証済みになっています。
1文が決まると、後の判断が速くなります
この1文があると、迷いが消えます。狙う言葉の候補が10個出てきたとき、その1文に合うのはどれかで選べます。トップページに実績を並べるかどうかも、その1文を伝える邪魔になるかどうかで決まります。
逆に、1文が無いまま作り始めると、判断のたびに「あったほうがいい気がする」で要素が増えます。中小企業のサイトが読みにくくなる原因の大半は、ここにあります。
中小企業が最初に取るべき言葉は、掛け算でできています
「ホームページ制作」のような大きな言葉は、検索している人の数も多い代わりに、上位を取るまでの距離が遠くなります。中小企業が最初に狙うのは、そこではありません。
効くのは、掛け算です。
- 地域 × 業種(例:世田谷 税理士)
- 業種 × 困りごと(例:工務店 集客できない)
- 対象 × 場面(例:個人事業主 開業 手続き)
- 商品 × 比較軸(例:業務用冷蔵庫 中古 選び方)
掛け算にすると、検索する人の数は減ります。ただし、その言葉で検索している人は、すでに何を探しているかがはっきりしています。問い合わせまでの距離が近いのはこちらです。
ここで1つだけ注意があります。掛け算を細かくしすぎると、候補が0件になります。細かくするたびに候補の数を確かめて、3件を切ったところで1つ手前に戻してください。
地域を入れるかどうかは、商圏で決まります
来店や訪問が必要な事業なら、地域を入れます。飲食、美容、整体、リフォーム、士業の対面相談などです。この場合、検索する人も地域名を入れて打っています。
オンラインで完結する事業なら、地域は入れません。入れると、その地域の人しか来なくなります。全国から探されている言葉を狙ってください。
判断に迷う場合は、いまの顧客の所在地を数えてみてください。8割が同じ都道府県なら地域を入れる、散らばっているなら入れない。それだけで決まります。
検索の管理ツールで、最初に見る3つの数字
言葉を決める前に、いまの自社がどう見られているかを確かめます。使うのは検索エンジンが無料で出している管理ツールです。登録していない場合は、ここから始めてください。所要時間は15分です。
並んでいる数字は多いので、最初に見るのは3つに絞ります。
1つ目:どの言葉で表示されているか
クエリの一覧を開いて、上から20個を見てください。ここに社名しか並んでいない場合、そのサイトは「すでに自社を知っている人」だけが見つけている状態です。新規の問い合わせは生まれません。
社名以外の言葉が並んでいるなら、そのうち何個が事業に関係しているかを数えてください。関係のない言葉で表示されている場合、そのページは事業と関係のない疑問に答えてしまっています。人は来ますが、問い合わせにはつながりません。
2つ目:表示回数とクリック数の比
表示回数に対して、クリックされている割合を見ます。順位が10位以内なのにこの割合が3%を下回っている場合、原因はページの中身ではなく、検索結果に出ているタイトルと説明文です。
ここは、いちばん早く効く場所です。中身を書き直す必要がなく、タイトルと説明文を検索されている言い回しに寄せるだけで、翌週には数字が動きます。
3つ目:平均掲載順位
11位から20位に入っている言葉を探してください。あと1ページ分で1ページ目に届く位置です。ここに入っている言葉は、新しく記事を書くより、いまあるページを厚くするほうが早く上がります。
この3つだけで、次に何をすべきかが決まります。社名しか出ていないなら言葉を取りに行く。順位はあるのに押されていないならタイトルを直す。11位から20位があるならそのページを厚くする。
数字が3〜4日遅れて出ることに注意してください
この管理ツールの数字は、当日分がすぐには出ません。3〜4日遅れて反映されます。先週と今週を比べるときは、両方とも同じだけずらして比べてください。今週だけ直近の日付まで含めると、まだ埋まっていない日が入るので、必ず「落ちている」ように見えます。
この見間違いで、うまくいっている施策をやめてしまう会社があります。数字を比べる前に、比べる期間の端をそろえてください。
補助金で作ったホームページが、いちばん危ないのはなぜか
中小企業のホームページ制作には、いくつかの補助制度があります。使えるなら使うべきです。ただ、補助金で作ったサイトから問い合わせが来ていないという相談は、実際に多く寄せられます。
原因は、制度そのものではありません。制度の性質が、作る側と発注する側の両方の意識を「作ること」に集中させるところにあります。
作ることが目的になると、運用が残りません
補助金は、多くの場合、制作にかかった費用に対して出ます。作った後に何をするかは、対象になりにくい部分です。
すると、こういう順番になります。予算の枠が先に決まる。その枠を使い切る形で仕様が決まる。ページ数が増える。写真を撮る。動きのある演出が入る。完成する。報告書を出す。そこで終わります。
公開された時点で、そのサイトに人を連れてくる仕組みは1つも入っていません。検索から人が来るには、検索されている言葉で書かれたページが要ります。それは制作費ではなく、運用の話です。
先に決めておくと変わること
もし、これから補助制度を使ってサイトを作る予定があるなら、着手前に2つ決めておいてください。
- 公開後の1年で、どの言葉で見つかる状態を目指すか
- その言葉のページを、誰が、どのくらいの頻度で足していくか
この2つが決まっていれば、制作の仕様も自然に変わります。トップページの演出に使う時間より、記事を置く場所の設計に時間が向きます。
決まっていない場合、公開の日がゴールになります。そして公開の翌月から、誰も更新しないサイトが1つ増えます。
自社でやるか、外注するか
中小企業でこの判断に迷わない会社は、ほとんどありません。人手が足りないから外注したいが、外注すると中身を知っている人がいなくなる。どちらにも理由があります。
判断の基準を1つに絞るなら、こうなります。その仕事が、自社の事業内容を知らないとできないかどうかです。
知らないとできない仕事
次の3つは、外に出しても品質が上がりません。
- どんな相手に何を売っているか、言葉にすること
- 相手がよく聞いてくる質問と、それへの答え
- 他社ではなく自社を選んだ理由を、既存の顧客に聞くこと
3つ目は、やっている会社が少ない割に効きます。既存の顧客に「なぜうちを選んだのか」を5人に聞くと、自社が思っていた強みと、選ばれた理由がずれていることがよくあります。サイトに書くべきなのは、後者です。
出したほうがいい仕事
逆に、次の仕事は外に出したほうが速く、質も安定します。
- 検索されている言葉を探して、需要を確かめる作業
- 決まった言葉で、決まった量の文章を毎週作り続けること
- 公開の作業と、公開後の数字の確認
特に2つ目です。毎週1本を1年続けるのは、本業を持っている人には現実的ではありません。3か月で止まります。止まった時点で、それまでの分も伸びなくなります。
外注する場合に、着手前に確かめること
制作でも記事でも、頼む前に次の2つを聞いてください。
1つ目は、狙う言葉をどう決めるかです。ここで「御社の事業内容に合わせて選びます」としか返ってこない場合、その言葉に検索需要があるかどうかを確かめる工程が入っていません。自社の検証で、表示回数が23分の1になった側と同じ選び方です。
2つ目は、公開後に何を見るかです。順位だけを報告する形だと、順位が上がっているのに問い合わせが増えないという状態に気づけません。表示回数と、問い合わせページへの到達数まで見る形になっているかを確かめてください。
載せる要素は、増やすのではなく引きます
中小企業のホームページで、もう1つよく起きているのが2つ目の詰まりです。人は来ているのに、問い合わせページまで進まない状態です。
この原因は、たいてい要素の多さにあります。訪れた人が最初の画面で見るものが多すぎて、どこを押せばいいのか分からなくなっています。
最初の画面に置くのは、1つだけです
訪問者が最初に見る画面には、次の1つだけを置いてください。この会社は、誰の、どんな困りごとを解決するのか。
ここに自社の受賞歴、創業年数、取引社数を並べたくなります。気持ちは分かります。ただ、初めて来た人にとって、それは自分に関係のある情報ではありません。自分の困りごとが書かれていないページから、人は3秒で離れます。
実績は、必要です。ただし置く場所は最初の画面ではありません。「これは自分の話だ」と思ってもらった後、本当かどうかを確かめる段になって初めて効きます。
「お気軽にお問い合わせください」が効かない理由
ほとんどの中小企業のサイトに、この一文が入っています。そして、ほとんど押されていません。
押されない理由ははっきりしています。押した後に何が起きるかが書かれていないからです。営業の電話が来るのか、見積もりが出てくるのか、その場で契約を求められるのか。分からないものを押す人はいません。
書き換えるなら、こうなります。何が起きて、どのくらい時間がかかって、費用は発生するのか。この3つを、ボタンのすぐそばに置いてください。
「初回は60分のオンラインで、現状を一緒に見ます。その場で契約のお願いはいたしません」。このくらい具体的にすると、押される数が変わります。
フォームの入力欄は、5つを超えると落ちます
3つ目の詰まりが起きているのは、たいていフォームです。
会社名、部署名、役職、氏名、フリガナ、郵便番号、住所、電話番号、メールアドレス、業種、従業員数、問い合わせ種別、内容。ここまで並んでいるフォームは珍しくありません。
入力欄が増えるほど、送信される数は減ります。営業が後で聞けばいい項目は、フォームから外してください。最初の接触で本当に要るのは、名前と連絡先と用件だけです。
もう1つ、必須と任意の印が付いていないフォームは、それだけで送信率が落ちます。どこまで書けば送れるのかが分からないと、人は途中で閉じます。
ページの構成は、役割で分けます
中小企業のサイトで、ページ数を増やすことに意味はありません。意味があるのは、1つのページに1つの役割を持たせることです。
| ページ | 役割 | 読む人の状態 |
|---|---|---|
| 記事 | 検索から人を連れてくる | まだ自社を知らない |
| サービス | 何を頼めるかを伝える | 自社に興味を持った |
| 実績 | 本当かどうかを確かめさせる | 頼むか迷っている |
| トップ | 誰の何を解決するかを伝える | 社名で検索してきた |
| 問い合わせ | 次の一歩を1つだけ提示する | 決めかけている |
この表で見落とされやすいのがトップページです。新規の訪問者の入口は、トップではなく記事です。検索から来る人は、自分の疑問に答えるページに直接着地します。トップページを見るのは、社名を知ってから確かめに来た人です。
それなのに、多くの会社がトップページの作り込みに時間の大半を使います。順序が逆になっています。
記事から、サービスへつなぐ道を作る
記事を書いても問い合わせが増えないという相談で、いちばん多い原因がこれです。記事は読まれているのに、その記事からサービスのページへ行く道がありません。
記事の終わりに、次に読むべきページを1つだけ置いてください。2つ以上置くと、選ぶ手間が生まれて、どちらも選ばれなくなります。
実績とお客様の声は、数字にすると効きます
実績のページに「多数の企業様にご利用いただいております」と書いてあるサイトは、まだかなりあります。この一文は、読んだ人の判断を1ミリも動かしません。
動くのは、具体の情報です。
- どの業種の、どのくらいの規模の会社か
- 依頼される前、何に困っていたか
- 何をして、どのくらいの期間で、何がどう変わったか
3つ目に数字が入ると、一気に読まれます。「問い合わせが増えました」ではなく「月に2件だった問い合わせが、4か月目に9件になりました」と書く。同じ事実でも、届き方が違います。
数字を出せない場合の書き方
守秘義務で数字を出せない場合もあります。その場合は、数字の代わりに変化の中身を具体的に書いてください。
「問い合わせの質が変わり、値段の話から始まる商談が減りました」。これは数字ではありませんが、読んだ人には何が起きたかが伝わります。抽象的な褒め言葉より、はるかに効きます。
お客様の声は、書いてもらう質問を変えます
「ご感想をお聞かせください」と頼むと、褒め言葉が返ってきます。褒め言葉は、読んだ人の判断を動かしません。
聞くなら、こうです。「依頼する前、いちばん心配だったことは何でしたか」。この答えは、これから頼もうか迷っている人が、いま抱えている不安とほぼ一致します。それが解消された話として載るので、そのまま背中を押します。
スマートフォンで、自分のサイトを開いてみてください
中小企業のサイトで、いまだに起きているのがこれです。パソコンで作って、パソコンで確認して、公開する。ところが訪問者の多くは、スマートフォンで見ています。
実際に自分の電話で開いて、次の4つを確かめてください。
- 最初の画面に、誰の何を解決するかが文字で出ているか
- 電話番号を押したら、そのまま発信できるか
- 問い合わせボタンが、指で押せる大きさか
- 横にはみ出して、指で左右に動かさないと読めない部分が無いか
1つ目でつまずくサイトが多くあります。パソコンでは1画面に収まっていた説明が、スマートフォンでは画像だけが表示され、文字が下に押し出されています。訪問者は文字が出てくる前に離れます。
4つ目は、表を入れているページで起きます。横に長い表は、スマートフォンだと画面からはみ出します。表の外側を横にスクロールできるようにしておくか、項目を減らしてください。
中小企業に、ホームページは本当に必要か
ここまで作る前提で書いてきましたが、必要のない場合もあります。先にそちらをお伝えします。
作らなくていい場合
次のどれかに当てはまるなら、いま作る必要はありません。
- 紹介だけで手が回らないほど受注がある
- 取引先が固定されていて、新規を取る予定がない
- 商圏が徒歩圏で、地図アプリの情報だけで足りている
- 公開後にページを足す人が、社内にも社外にもいない
最後の1つが、いちばん重要です。作った後に誰も触らないサイトは、置いておくだけで古くなります。3年前の情報が載ったままのページは、無いより信用を落とします。
作ったほうがいい場合
逆に、次のどれかに当てはまるなら、作る価値があります。
- 商談の前に、相手が必ず社名を検索している
- 説明に時間がかかる商品で、事前に読んでもらえると商談が短くなる
- 採用で、応募者から会社の実態を聞かれることが多い
- 紹介以外の経路を、1つでも増やしたい
2つ目は見落とされがちですが、効果が大きい部分です。商談の前に読んでもらえる説明があると、初回の打ち合わせが説明の時間ではなく、相手の状況を聞く時間になります。受注率が変わります。
参考にするサイトを選ぶときの注意
「中小企業 ホームページ 例」で探している方が多くいます。他社のサイトを見て決めたい、という気持ちは自然なものです。ただ、選び方を間違えると、時間をかけたぶんだけ遠回りになります。
見た目がきれいなサイトを参考にしない
制作会社が事例として並べているサイトは、見た目が整っています。ただ、そこに載っているのは完成した見た目だけで、そのサイトから問い合わせが来ているかどうかは載っていません。
参考にすべきなのは、きれいなサイトではなく、機能しているサイトです。そして、機能しているかどうかは外から確かめられます。
外から確かめる方法
気になったサイトについて、次の3つを見てください。
- 記事の一覧があり、直近3か月以内に更新されているか
- その記事のタイトルが、自社を語る言葉ではなく、読者の疑問の形になっているか
- 記事の終わりから、サービスのページへ行く道があるか
3つとも当てはまるサイトは、検索から人を連れてきて、問い合わせまでつなぐ形になっています。見た目が地味でも、こちらを参考にしてください。
逆に、記事が無く、トップページだけが作り込まれているサイトは、社名を知っている人が確かめに来る前提で作られています。新規を取る参考にはなりません。
同業のサイトばかり見ないでください
もう1つ。参考にするサイトを同業だけに絞ると、業界の慣習をそのまま持ち込むことになります。同業がみな同じ形をしているなら、それは差がつかない形です。
むしろ、自社と規模が近くて業種が違う会社のサイトを見てください。業界の慣習が入っていないぶん、どこが分かりやすくてどこが分かりにくいかを、自分が初めて訪れた人の目で判断できます。
業種によって、詰まる場所が違います
3つの詰まりのうちどれになりやすいかは、業種でおおむね決まります。自社の業種から先に見てください。
| 業種 | 詰まりやすい場所 | 先に直すもの |
|---|---|---|
| 士業・コンサルティング | 1つ目(見つからない) | 相談内容ごとのページを作る |
| 工務店・リフォーム | 2つ目(進まない) | 施工事例を地域と費用感で並べる |
| 飲食・美容・整体 | 3つ目(押せない) | 予約の導線を1つに絞る |
| 製造業・法人向け | 1つ目(見つからない) | 製品名ではなく用途で書く |
| 小売・通販 | 2つ目(進まない) | 商品ページに選び方を足す |
士業と法人向けの製造業が、同じ理由で見つからない
この2つは業種としては遠いのに、詰まる原因が同じです。自社の中で使っている言葉で書いているためです。
士業なら、業務の正式名称でページを作っています。ところが困っている人は、その名称を知りません。知っていたら、専門家に相談する必要がありません。人が打っているのは、困りごとそのものの言葉です。
製造業も同じで、製品の型番や技術の名前でページが作られています。探しているのは、その技術で何ができるかを知りたい人です。用途の言葉で書かれたページが1枚あるだけで、届く人数が変わります。
工務店と小売は、来た人が決めきれない
この2つは人が来ています。詰まっているのは2つ目です。
共通しているのは、比べるための材料が足りないことです。施工事例が写真だけで並んでいる、商品が仕様だけで並んでいる。読んだ人は、自分の場合はどれなのかを判断できません。
足すのは、選び方です。「築何年ならどの工事から検討するか」「この用途ならどの型を選ぶか」。これがあると、読んだ人が自分で候補を1つに絞れます。絞れた人だけが、問い合わせます。
更新が続かない本当の理由
ホームページを作った会社の多くが、3か月で更新を止めます。理由は忙しさではありません。何を書けばいいか分からなくなるためです。
最初の数本は書けます。よく聞かれる質問、事業への思い、新しいサービスの案内。ここまでで在庫が尽きます。次の1本の題材が思いつかず、間が空き、そのまま止まります。
題材は、思いつくものではなく、探すものです
自社もここで止まりかけました。解決したのは、書く題材を頭の中から探すのをやめたことです。
いま自社では、毎朝ひとつの処理を自動で走らせています。事業に関係する言葉を種にして、検索候補を機械的に広げ、そのうち検索需要があって、まだ自社が書いていない言葉だけを取り出します。書く題材が、毎朝3つ出てきます。
この形にした理由ははっきりしています。人が思いつく言葉は、すでに書いた言葉に似るためです。似た言葉のページを増やすと、自社のページ同士が同じ検索結果で競合します。増えているのに、どれも上がらなくなります。
自社では、1つの領域に105本の記事が散らばっていた時期がありました。90日間の表示回数は、105本の合計で65回でした。1本あたり0.6回です。本数が足りなかったのではなく、105本が票を割り合っていました。
同じ領域に3本目を書く前に、確かめること
中小企業の規模なら、機械の仕組みまで作る必要はありません。代わりに、書く前にこれだけ確かめてください。
その言葉で自社サイト内を検索して、すでにあるページが出てこないか。出てきたら、新しく書かずにそのページを書き直してください。3本に分けて書いた内容を1本にまとめると、順位が上がることのほうが多くなります。
AI検索の時代に、中小企業のホームページはどうなるか
検索結果の上にAIの回答が出るようになり、そこに引用されるための特別な対策が必要だという話をよく聞くようになりました。
この点について、検索エンジン側は公式に見解を出しています。要約すると、AIによる回答に取り上げられるための特別な要件はなく、通常の検索に向けた指針がそのまま当てはまる、という内容です。特別な記述形式や、専用のファイルを置くことは求められていません。
つまり、中小企業が新しく覚えることはほとんどありません。検索されている言葉で、その言葉を打った人の疑問に答えるページを作る。これまでと同じです。
ただし、書き方で差は出ます
2024年にKDDという国際会議で発表された研究に、生成AIの回答へ引用されやすくなる書き方を実験で比べたものがあります。Aggarwalらによる「Generative Engine Optimization」という論文です。
その実験では、いくつかの書き方について、引用のされやすさがどれだけ変わるかが測られています。
| 書き方 | 引用されやすさの変化 |
|---|---|
| 専門家の発言などを直接引用する | +41.0% |
| 数字を入れる | +30.6% |
| 文章を読みやすく整える | +28.0% |
| 出典を明記する | +27.5% |
| キーワードを詰め込む | −8.3% |
いちばん効いたのは、直接引用でした。そして、キーワードを詰め込む書き方は、唯一マイナスでした。
1つ、この研究について正直にお伝えしておくことがあります。実験に使われたプログラムを読むと、引用や出典を機械的に生成させる際、実在しない情報源を作ってよいという指示が含まれていました。つまり、この数値は「本物の出典を付けた場合」ではなく「出典らしきものが付いている場合」の効果です。
自社では、同じことはしていません。数値の傾向は参考にしつつ、書くのは確かめた事実だけにしています。実在しない出典を付けたページは、読んだ人が1つ確かめた時点で信用を失います。中小企業にとって、失った信用を取り戻すコストは、順位1つの価値をはるかに超えます。
よくある誤解を、6つ外します
中小企業のホームページについて、相談の場で繰り返し出てくる誤解です。
誤解1:ページ数を増やせば、そのうち見つかる
自社の検証では、需要を確かめずに選んだ側が23分の1でした。需要の無い言葉のページは、何本増やしても表示されません。増やす前に、1語10秒の確認を挟んでください。
誤解2:デザインを新しくすれば問い合わせが増える
デザインが効くのは2つ目の詰まりだけです。人が来ていない状態でデザインを変えても、来ていない人には見えません。順番は、人を連れてくるほうが先です。
誤解3:更新頻度が高いほど評価される
更新の回数そのものを評価する仕組みは、検索エンジン側から示されていません。評価されるのは、その言葉で探している人の疑問に答えているかどうかです。中身の薄いページを毎日足しても、上がりません。
誤解4:アクセス数が増えれば売上も増える
連動するのは、事業に関係のある言葉から来ている場合だけです。関係のない言葉で人が来ても、問い合わせは増えません。見るべきなのは総数ではなく、どの言葉から来ているかです。
誤解5:SEOは時間がかかるから、広告のほうが確実
広告は確実に人を連れてきます。ただし、止めた月に0に戻ります。そして、受け皿が詰まっている状態で広告を出すと、詰まったまま人数だけが増えます。2つ目と3つ目の詰まりを直してから出すと、同じ予算での結果が変わります。
誤解6:AI検索が普及したら、ホームページは要らなくなる
AIが答える元になっているのは、公開されているページです。ページが無ければ、引用される対象がありません。要らなくなるのではなく、引用される側に回れるかどうかの差が広がります。
まず1時間で、自社の現在地を数える
ここまでお伝えしたことを、実際に確かめる手順です。所要時間は合計で1時間です。
| 確かめること | 方法 | 時間 | 要注意の目安 |
|---|---|---|---|
| 月に何人来ているか | アクセス解析を見る | 10分 | 100人を下回っている |
| どの言葉で見つかっているか | 検索の管理ツールを見る | 15分 | 社名だけで、他が無い |
| 狙っている言葉の候補の数 | 検索窓に打つ | 10分 | 3件を下回っている |
| 問い合わせページに何人来たか | アクセス解析を見る | 10分 | 訪問数に対して極端に少ない |
| フォームの入力欄の数 | 自分で入力してみる | 5分 | 5つを超えている |
| 問い合わせへの返信までの時間 | 過去のやり取りを見る | 10分 | 翌営業日以降になっている |
6つ数えると、詰まっている場所が1つに絞れます。直すのはそこだけです。
数えずに改善を始めると、効いたかどうかが分かりません。分からないまま次の手を打つと、また分からない結果が返ってきます。中小企業がいちばん避けたいのは、この状態です。人手も予算も限られているので、効いていない打ち手を続ける余裕がありません。
よくいただく質問
ホームページは何ページあればいいですか
ページ数に正解はありません。役割で決めます。トップ、サービス、実績、問い合わせ、会社概要で5ページ。ここに、検索から人を連れてくる記事のページが足されていきます。記事は、狙う言葉の数だけ必要です。
逆に、役割の重なったページは減らしてください。似た内容のページが複数あると、検索結果でどれを出すかが定まらず、どれも上がりにくくなります。
公開してから、どのくらいで問い合わせが来ますか
検索から人が来るまでには、早くて2か月、遅いと半年かかります。公開した翌月に問い合わせが来ることは、まずありません。
ただし、すでに人が来ているサイトの場合は別です。最初の画面の文言と、問い合わせボタンの書き方を直すだけなら、直した週のうちに数字が動きます。時間がかかるのは、人を連れてくる部分だけです。
ブログは書いたほうがいいですか
「ブログ」という枠で日々の出来事を書くなら、必要ありません。読むのは、すでに自社を知っている人だけです。
検索されている言葉で、その言葉を打った人の疑問に答えるページを作るなら、必要です。呼び方はブログでも記事でも構いません。違うのは、自社が書きたいことを書くか、探されている疑問に答えるかです。
写真は、プロに撮ってもらうべきですか
人物と、現場の写真は、撮ってもらう価値があります。特に法人向けの事業では、誰が対応するのかが分かる写真があるだけで、問い合わせのハードルが下がります。
一方、素材集の写真をトップページに並べるのは、逆効果です。同じ写真は他社も使っています。訪れた人は、それが自社の写真でないことに気づきます。
更新は、誰がやるのがいいですか
自社の事業を説明できる人が、1人は関わっている形にしてください。全部を外に出すと、事業と関係のない一般論のページが増えます。
現実的な分担は、題材と要点を社内で出し、文章にする作業を外に出す形です。この形なら、本業を持っている人でも続きます。
作り直すべきか、いまのを直すべきか
先に6つの数字を数えてください。人が来ていない場合、作り直しても来ません。原因は見た目ではなく、狙っている言葉にあります。
人は来ているのに問い合わせページまで進んでいない場合は、直す価値があります。ただしこの場合も、全部を作り直すのではなく、最初の画面と導線だけで足りることがほとんどです。
90日で、ここまで進みます
1人で回す前提の進め方です。専任を置ける場合は、この半分の期間で進みます。
| 時期 | やること | この時点で分かること |
|---|---|---|
| 1週目 | 6つの数字を数える | 詰まっている場所が1つに決まる |
| 2〜3週目 | 狙う言葉を10個決め、候補の数で絞る | 書く価値のある言葉が3〜5個残る |
| 4〜8週目 | 残った言葉のページを、1週に1本ずつ作る | 検索の管理ツールに表示が出はじめる |
| 9〜10週目 | 最初の画面と、問い合わせボタンの文言を直す | 問い合わせページへの到達数が動く |
| 11〜12週目 | フォームの入力欄を削る | 送信の件数が動く |
検索から人が来るまでには時間がかかります。2〜3週目に決めた言葉のページが、検索結果に安定して出るまで、早くて2か月、遅いと半年です。ここを短くする方法はありません。
その代わり、9週目以降の作業は、すでに来ている人に対する打ち手なので、直した週のうちに数字が動きます。時間がかかる作業を先に始めて、待っている間に効果の早い作業をする。この順番だと、90日のあいだ手が止まりません。
まとめ
この記事でお伝えしたことを整理します。
中小企業のホームページから問い合わせが来ない原因は、3つのどれかです。人が来ていないか、来た人が問い合わせページまで進んでいないか、フォームまで来て送信されていないか。上から順に詰まりを取ります。
いちばん多いのは1つ目で、その正体は、狙っている言葉に検索需要が無いことです。自社は3つのドメインで狙う言葉の選び方だけを変えて測り、10位以内1本あたりの表示回数に23倍の差を確かめました。順位もクリック率もどちらも正常です。足りなかったのは表示回数だけでした。
その確認は、検索窓に言葉を打つだけで済みます。1語あたり10秒です。候補が3件以上あるかどうかを見てください。
そして、載せる要素は増やすのではなく引きます。最初の画面には、誰のどんな困りごとを解決するのかだけを置く。ボタンには、押した後に何が起きるかを書く。フォームの入力欄は、営業が後で聞ける項目を外す。
作る前でも、すでにある場合でも、順番は同じです
この記事に、載せるべき要素の一覧を置かなかったのは意図的です。並べられた要素をそろえるより、いま詰まっている場所を1つ見つけるほうが、確実に前へ進むためです。
自社のサイトが、いま月に何人を連れてきていて、そのうち何人が問い合わせページまで来ていて、何人が送信しているか。この3つの数字を出すところから始めてみてください。1時間で出ます。
数字が出たら、直す場所は自然に1つに決まります。
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