先日、Q&Aサイトでこのような切実な悩みを拝見しました。「少なくない費用をかけてホームページをリニューアルしました。デザインは見違えるほどきれいになり、社内の評判も良いです。ところが公開から3か月経っても、問い合わせの数は前とまったく変わりません。何のためにお金を払ったのか分からず、社長にも説明できずに困っています」。担当者にとって、これほど心細い状況はありません。数字こそ違え、同じ状況にいる中小企業の経営者やウェブ担当者は驚くほど多くいます。
結論から書きます。見た目を新しくするだけのリニューアルで問い合わせが増えることは、ほとんどありません。これは担当した制作会社の腕が悪かったという話とは別のところに原因があります。「作り直せば増えるはずだ」という前提そのものが、最初からずれているのです。この記事は、リニューアルしたのに反応が変わらない理由を分解し、次にどこへ手を入れれば問い合わせが動き出すのかを、その日のうちに1か所決められる状態まで持っていくために書きました。
「リニューアルしたのに問い合わせが増えない」という相談の中身
この種の相談には、共通した言葉づかいがあります。かつて自社サイトを見直したいと相談に来られた製造業の経営者は、開口一番こうおっしゃいました。「きれいにはなったんです。でも、きれいになっただけなんです」。この一文に、問題のすべてが詰まっています。見た目の刷新は達成されたのに、成果につながる手応えだけがすっぽり抜け落ちている。同じ言葉を、これまで何人の経営者から聞いたか分かりません。
リニューアルという言葉は、実際には性質の違う複数の作業をひとまとめにしています。配色を整える、写真を差し替える、スマートフォンで崩れないようにする、こうした作業は見た目の刷新です。一方で、訪れた人がどんな順番で読み、どこで次の一歩に進むのかという設計は、見た目とは別の作業です。多くのリニューアルは前者だけを新しくして、後者にはほとんど手を入れません。問い合わせを生むのは後者の側なので、前者だけを変えても数字は動かないのです。
見た目が変わった箇所と、成果に効く箇所は重ならない
変わったところと、問い合わせに効くところを並べてみると、両者がほとんど交わっていないことが見えてきます。
| リニューアルで実際に変えたもの | 問い合わせに直接効くもの | 重なっているか |
|---|---|---|
| 配色とフォントの刷新 | 訪問者が最初に置かれる問いへの答え | ほぼ重ならない |
| トップの大きな画像の差し替え | 「誰の何を解決する会社か」の一文 | 重ならない |
| スマートフォン対応 | 次の行動へ進むボタンの位置と文言 | 一部だけ重なる |
| 会社概要ページの整理 | 不安を消す証拠の見せ方 | 重ならない |
| ニュース欄の追加 | 問い合わせフォームまでの導線 | 重ならない |
表の右側に一度も手を入れないままリニューアルを終えると、公開後に残るのは「きれいになっただけ」という状態です。社内の評判が良いのに数字が動かない理由は、社内が評価しているのは左側で、顧客が反応するのは右側だからです。
「作り直せば増える」という思い込みはどこから来るのか
この思い込みには出どころがあります。ホームページは「作れば見てもらえる」という感覚が、いまだに根強く残っているのです。店舗であれば、良い場所に新しい店を構えれば通行人が入ってきます。その感覚をそのままウェブに持ち込むと、「新しくすれば人が来る」という期待になります。
ところがウェブサイトは、公開しただけでは誰の前にも現れません。検索で見つけてもらうか、広告で連れてくるか、名刺やチラシから入ってきてもらうか、いずれかの入り口を通らない限り、存在していないのと同じです。リニューアルはこの入り口の数を増やす作業を含みません。だから、リニューアル単体では訪問者の数が増えないのです。
制作の現場で「集客」と「作り直し」が混ざる理由
制作会社に見積もりを依頼すると、提案書の多くはデザイン案とページ構成の説明で埋まります。これは制作会社が手を動かせる範囲がそこだからで、悪意があるわけではありません。ただ、依頼する側は「作り直し=集客対策」だと受け取ってしまいます。ここで期待と成果物のあいだにずれが生まれます。提案の段階で「このリニューアルで訪問者の数はどう変わる想定ですか」と一言たずねるだけで、このずれは表に出てきます。
問い合わせが増えない本当の理由は3つの層に分かれている
問い合わせが生まれるまでには、越えなければならない層が3つあります。どの層で止まっているかを見分けないまま作り直すと、詰まっている場所を素通りしたまま、詰まっていない場所だけをきれいにしてしまいます。
| 層 | ここで起きていること | 止まっているときの症状 | 次にすること |
|---|---|---|---|
| 見つけてもらう層 | 検索や紹介でサイトにたどり着く | アクセス数そのものが少ない | 入り口を数えて増やす |
| 読み進める層 | トップから中の情報へ進む | トップだけ見て離脱する | 最初の一文を組み直す |
| 行動する層 | 問い合わせや予約に進む | 読むが行動しない | 次の一歩を1つに絞る |
見つけてもらう層で止まっている場合
アクセス解析を開いて、1日の訪問者が両手で数えられるほどしかいないなら、止まっているのはこの層です。この状態でデザインをどれだけ磨いても、そもそも見る人がいないので数字は動きません。ここで必要なのは検索で拾われる記事を増やす、既存の顧客に紹介してもらう仕組みを作る、といった入り口を増やす作業です。リニューアルとは別の工事だと考えてください。
読み進める層で止まっている場合
訪問者はいるのに、トップページだけを見て帰っていく。アクセス解析で「1ページだけ見て離脱した人の割合」が大きいなら、この層で止まっています。原因の多くは、トップページの最初の画面で「これは自分に関係のあるサイトだ」と伝わっていないことです。大きな画像と会社のキャッチコピーだけが並び、訪れた人が抱えている問いに一言も触れていない。この状態だと、人は数秒で離れます。
行動する層で止まっている場合
中のページまで読まれているのに、問い合わせに進まない。これは行動する層で止まっています。読んで納得したのに動かないのは、次に何をすればいいのかが分からない、あるいは選択肢が多すぎて選べない状態です。ここは後述する引き算がそのまま効く層です。
多くの会社がやってしまう「足し算のリニューアル」
問い合わせが増えないとき、ほとんどの会社は同じ方向に進みます。足りないから増えないのだと考えて、何かを足そうとするのです。この足し算こそが、問い合わせを遠ざける最大の原因になります。
情報を足す
「説明が足りないのかもしれない」と考えて、実績、こだわり、代表の思い、サービスの細目を次々に追加していきます。結果として、トップページは会社が言いたいことで埋め尽くされます。訪れた人は、自分が知りたい一点にたどり着く前に、大量の自己紹介の中で迷子になります。読む量が増えるほど、行動へ進む力は弱まっていきます。
デザインを派手にする
「地味だから反応がないのだ」と考えて、動く演出や大きな装飾を足します。しかし訪れた人が見ているのは、自分の問題が解決するかどうかという一点です。装飾の華やかさは、その判断にほとんど関わりません。派手さが判断の邪魔になることのほうが多いのです。
広告費を足す
「見る人が少ないなら買えばいい」と考えて、広告を出します。ところが、行動する層で止まっているサイトに人を流し込むと、集めた人はそのまま行動せずに帰ります。穴の空いたバケツに水を注ぐようなもので、費用だけが積み上がっていきます。かつて相談に来られた小売業の方は、この状態を「毎月、集めては逃がしていた」と表現しました。
| 足し算の手 | 期待していたこと | 実際に起きたこと |
|---|---|---|
| 情報を追加する | 丁寧さが伝わり信頼される | 要点が埋もれて離脱が増える |
| デザインを派手にする | 目を引いて印象に残る | 判断が遅れて行動しなくなる |
| 広告費を増やす | 訪問者が増えて問い合わせも増える | 集めた人が行動せず費用だけ増える |
| ページ数を増やす | 網羅性で検索に強くなる | 薄いページが増えて全体が弱る |
売れるサイトはみな謙虚 — 足し算をやめて引き算に切り替える
ここからが本題です。問い合わせが動き出すサイトには共通した性質があります。訪れた人に対して謙虚であること、つまり自分が言いたいことを引っ込めて、相手が知りたい一点だけを差し出していることです。私たちはこの考え方を「売れるサイトはみな謙虚」と呼んでいます。
謙虚なサイトは、訪れた人を主人公として扱います。会社は主人公を助ける案内役に回り、前に出すぎません。トップページの最初の画面で伝えるのは、「あなたのその悩みは、ここで解決できます」という一点です。会社の立派さを語るのは、その後で構いません。この転換ができると、同じ訪問者数のまま問い合わせが動き始めます。
| 観点 | 足し算のサイト(自分が主役) | 謙虚なサイト(訪問者が主役) |
|---|---|---|
| 最初の一文 | 創業以来の実績を語る | 訪問者の悩みを言い当てる |
| 情報の量 | 言いたいことを全部載せる | 知りたい一点に絞る |
| 次の一歩 | 選択肢を横に並べる | 進む道を1本にする |
| 会社の立ち位置 | 主人公として前に出る | 案内役として後ろに回る |
| 成果の出方 | 訪問者を増やそうとする | 同じ訪問者で行動を増やす |
引き算は勇気がいる作業になる
引き算がむずかしいのは、気持ちの問題だからです。技術の話ではありません。苦労して作った実績紹介を削る、社長の思いを短くする、選べる道を1本に減らす。どれも「せっかく用意したのに」という抵抗を生みます。しかし訪れた人の頭の中では、選択肢が1つ増えるたびに判断が重くなります。用意した親切が、そのまま行動を止める重しになっているのです。
リニューアルの前に決めておく「たった1つの行動」
作り直しに入る前に決めるべきことがあります。このサイトで訪れた人に取ってほしい、いちばん大事な行動を1つに絞ることです。問い合わせなのか、電話なのか、資料の請求なのか、来店予約なのか。ここが定まらないままページを作ると、あちこちに小さな出口が散らばり、どれも押されないサイトになります。
| あなたの業種の型 | いま散らばりがちな出口 | 1つに絞るとよい行動 |
|---|---|---|
| 受注前の相談が長い業種 | 電話・問い合わせ・資料請求が横並び | 初回相談の申し込み1本 |
| 来店してもらう業種 | 予約・電話・地図がばらばら | 来店予約1本 |
| 資料で検討が進む業種 | 問い合わせと資料請求が競合 | 資料請求1本 |
| 単価が高く即決しない業種 | いきなり契約を求めてしまう | 無料の診断や見積もり1本 |
1つに絞ると、ほかの出口を消すことになります。消すのが怖いなら、主となる行動を大きく目立たせ、それ以外を小さく下げるところから始めてください。全部を同じ大きさで並べている状態が、いちばん押されない状態です。
トップページの最初の画面を読み直す手順
リニューアルで最も費用対効果が高いのは、トップページの最初の画面、スクロールせずに見える範囲を組み直すことです。ここは訪れた人が数秒で去るかどうかを決める場所で、全ページの中でいちばん多くの人が見ます。
最初の画面に入れる3つの要素
入れるべき要素は絞られています。訪れた人の悩みを言い当てる一文、それをどう解決するのかの一言、そして次に進むボタン。この3つがあれば、最初の画面としては十分に機能します。会社名の大きなロゴや、抽象的なキャッチコピーは、この3つが揃ってから考える余白です。
| 最初の画面の要素 | ありがちな状態 | 組み直したあと |
|---|---|---|
| 見出しの一文 | 会社の理念や抽象的な言葉 | 訪問者の悩みを言い当てる言葉 |
| 説明の一言 | 提供する機能の羅列 | その悩みがどう解決するか |
| ボタン | 複数が横に並ぶ | 主となる行動が1つだけ目立つ |
言葉は顧客が使う言葉に置き換える
見出しを組み直すときの材料は、顧客が実際に口にする言葉です。社内で使っている呼び方は、いったん脇に置きます。専門用語や社内での呼び方は、訪れた人には通じません。過去のメールや問い合わせ、商談の録音を読み返し、顧客がその悩みをどう表現しているかを拾い集めてください。その言葉をそのまま見出しに使うと、訪れた人は「まさにこれを探していた」と感じます。
問い合わせフォームまでの摩擦を減らす
行動する層で止まっているとき、最後の関門になりやすいのが問い合わせフォームです。ここに小さな摩擦がいくつも重なると、決心した人まで取りこぼします。
入力項目を減らす
フォームの項目が多いほど、途中でやめる人が増えます。最初の接触に本当に必要な項目は、名前と連絡先、そして用件くらいです。社内で管理に使いたい項目は、やり取りが始まってから聞けば足ります。最初のフォームで全部を聞き出そうとすると、その欲張りが送信ボタンを遠ざけます。
| フォームの状態 | 訪問者が感じること | 直し方 |
|---|---|---|
| 入力項目が10個以上ある | 面倒で後回しにする | 3つか4つまで削る |
| 必須の印が多い | 逃げ道がなく身構える | 任意で足りる項目は任意にする |
| 送信後に何が起きるか不明 | 押すのをためらう | この後の流れを一言添える |
| 電話番号しか出口がない | 営業時間外にあきらめる | フォームからも進めるようにする |
リニューアルの効果を数字でどう確かめるか
作り直したあと、効いているのかどうかを感覚で判断すると、次の一手を間違えます。見るべき数字は決まっていて、どれも無料の道具で確認できます。
見つけてもらえているかを見る道具
検索でどんな言葉から来ているか、そもそも検索結果に出ているかは、サーチコンソールで確認できます。表示された回数が少ないなら、見つけてもらう層で止まっています。ここが少ないうちは、デザインの調整より入り口を増やす作業が先です。
読まれ、行動されているかを見る道具
訪れた人がどのページをどれだけ見て、どこで帰ったかはアクセス解析で追えます。トップページだけ見て帰る人が多いなら読み進める層、中まで読むのに問い合わせに進まないなら行動する層です。数字が層を指し示してくれるので、勘で直す必要はありません。
数字を見るときのコツは、1つの数字だけを見て判断しないことです。問い合わせの件数だけを追うと、たまたま多かった月に一喜一憂してしまいます。件数と一緒に、どのページから問い合わせに進んだのか、どんな検索語で入ってきたのかを合わせて見ると、増減の理由が見えてきます。理由が分かれば、次に何を続けて何をやめるかを、勘に頼らず決められます。最初のうちは、月に一度、決まった曜日にこの3つの数字を書き留めるだけで十分です。記録が数か月たまると、季節による波と、自分の手当てが効いた変化とを、見分けられるようになります。
| 見たいこと | 使う道具 | この数字が示すこと |
|---|---|---|
| 検索結果に出ているか | サーチコンソールの表示回数 | 見つけてもらう層の状態 |
| 入り口でどう探されたか | サーチコンソールの検索語 | 顧客が使う言葉 |
| どこで帰ったか | アクセス解析の離脱 | どの層で止まっているか |
| 行動まで進んだ数 | アクセス解析のコンバージョン | 成果が出ているか |
制作会社との付き合い方を変える
次のリニューアルで同じ失敗を繰り返さないために、依頼のしかたを変えます。見た目の希望から伝えるのをやめて、成果の話から始めるのです。「このリニューアルで、どの層の問い合わせを、どれくらい動かしたいのか」を先に共有すると、提案の中身が変わります。
あわせて確認したいのは、公開したあとに手を入れ続けられるかどうかです。ウェブサイトは、数字を見ながら少しずつ直していく道具です。公開して納品したら関係が切れる、という看板とは性質が違います。作って納品して関係が切れる契約だと、直したい箇所が見つかっても動かせません。誰がどの頻度で見直すのかを、契約の前に決めておいてください。
付き合い方を変えるうえで、もう1つ大切なのは、丸ごと任せきりにしないことです。自社の顧客が何に困っていて、どんな言葉でそれを表現するのかは、制作会社よりも自社のほうがよく知っています。その知識を渡さないまま作り直しを任せると、きれいだけれど自社の顧客に響かないサイトができあがります。顧客から届いたメールや、現場で交わした会話の記録を制作会社に共有するだけで、出てくる提案の中身が変わります。作り直しは制作会社に任せる作業ですが、顧客を知る役割だけは、自社が手放してはいけません。
提案を受けたときにたずねる一言
提案書を前にしたら、「この案で問い合わせが増える理由は、この画面のどこにありますか」とたずねてみてください。答えがデザインの美しさに終始するなら、それは見た目の刷新の提案です。訪問者がどう動くかを画面に沿って説明できるなら、成果に向けた提案です。この一言で、両者を見分けられます。
業種によってつまずく場所は変わる
止まりやすい層は、業種によって傾向があります。自分の業種がどこでつまずきやすいかを知っておくと、最初に手を入れる場所の見当がつきます。
| 業種の型 | つまずきやすい層 | 最初に手を入れる場所 |
|---|---|---|
| 製造や技術を売る業種 | 読み進める層 | 専門用語を顧客の言葉に直す |
| 店舗や来店型の業種 | 見つけてもらう層 | 地図情報と地域の検索対策 |
| 相談から受注する業種 | 行動する層 | 初回相談の申し込みを1本化 |
| 単価が高く検討が長い業種 | 行動する層 | いきなり契約を求めない出口づくり |
リニューアルの前にやるべき「今のサイトの棚卸し」
作り直しの相談に入る前に、いま持っているサイトを一度棚卸ししてください。何ページあって、それぞれどれくらい見られていて、どこから人が入ってきているのか。これを把握しないまま「全部作り直す」と決めると、実は成果を出していたページまで一緒に捨ててしまうことがあります。アクセス解析を開けば、ほとんどの会社で「よく見られているのは、数年前に何気なく書いた1本の記事だった。社内が力を入れたトップページより読まれていた」という事実が見つかります。
棚卸しでやることは3つです。ページごとの訪問者数を書き出す、それぞれのページが訪問者にどんな行動を促しているかを一言で書く、そして問い合わせにつながっているページを見つける。この3つを終えると、作り直すべき場所と、触らずに残すべき場所が分かれてきます。作り直すのは反応の弱いところだけで足りることが多く、全面刷新が必要になる場面はそう多くありません。
| 棚卸しで確かめる項目 | 見つかりやすい事実 | 次の判断 |
|---|---|---|
| ページごとの訪問者数 | 見られているのは一部のページだけ | 反応の弱いページから手を入れる |
| 入り口になっているページ | トップより記事から入っている | 入り口の記事を厚くする |
| 問い合わせ前に見られるページ | 特定のページが行動を後押ししている | そのページは触らず残す |
| まったく見られないページ | 存在を忘れられたページがある | 統合するか思い切って減らす |
棚卸しを面倒に感じるなら、まずは1週間分だけでも構いません。直近の1週間で、どのページが何回見られたかを書き出すだけでも、思い込みと現実のずれが見えてきます。社内で「うちの顔はトップページだ」と信じていたのに、実際にはまったく別のページが入り口になっている。この発見が、作り直しの優先順位を大きく変えます。数字は、社内の思い込みを静かに正してくれる道具です。
「導線」という言葉を分解する
制作会社との打ち合わせで必ず出てくるのが「導線」という言葉です。便利な言葉ですが、意味が広すぎて、分かったつもりのまま話が進んでしまいます。導線とは、訪れた人が最初に着いた場所から、問い合わせという行動にたどり着くまでの道のことです。この道を、入り口・道の途中・出口の3つに分けて見ると、どこが切れているのかがはっきりします。
入り口がどこかを知る
訪れた人は、必ずしもトップページから入ってくるわけではありません。検索から特定の記事に直接着地したり、名刺のURLから会社概要に飛んできたりします。入り口が記事なら、その記事から次にどこへ進めるのかを設計しておかないと、読んで満足して帰られてしまいます。棚卸しで見つけた「よく入られているページ」に、次の一歩へのボタンが置かれているかを確かめてください。
道の途中で迷わせない
入り口から出口までのあいだに、余計な分かれ道が多いほど、人は途中で脱落します。よくあるのは、あちこちのページに違う種類のボタンが散らばっていて、押すたびに別の場所へ飛ばされる状態です。訪れた人からすると、進んでいるのか戻っているのか分からなくなります。道は一本にまとめ、どのページからでも同じ出口へ向かえるようにしておくと、迷いが減ります。
出口を分かりやすくする
道の終点にある問い合わせや予約が、目立たない場所に小さく置かれていることは珍しくありません。せっかく最後まで来た人が、出口を見つけられずに帰ってしまいます。出口は、道の途中の何か所かと、いちばん最後に、はっきり見える形で置いてください。
| 導線の部分 | 切れているときの症状 | つなぐ手当て |
|---|---|---|
| 入り口 | 記事に着地して次へ進めない | 記事の末尾に次の一歩を置く |
| 道の途中 | 違うボタンで飛ばされ迷う | 出口を一本に統一する |
| 出口 | 問い合わせが目立たない | 見える場所へ大きく置く |
リニューアル後に問い合わせが増えた会社は何を変えたか
作り直して数字が動いた会社の話には、共通点があります。派手なことをしたわけではありません。むしろ、載せる情報を減らし、行き先を一本にした会社ほど、公開後の反応が変わっています。
ある建設関連の会社は、トップページに並べていた事業紹介を思い切って削り、「雨漏りの相談を受け付けます」という一文だけを最初の画面に残しました。担当者は「あれもこれも書きたかったのを全部我慢しました」と振り返ります。結果として、それまで月に数件だった問い合わせの中身が、成約につながりやすい相談へ変わったといいます。伝える相手を絞ったことで、来る人の質が変わったのです。
別の士業の事務所は、問い合わせフォームの項目を大幅に減らしただけで、送信される件数が目に見えて変わりました。「聞きたいことを全部フォームに詰め込んでいたのが、そもそもの間違いでした」という言葉が、この失敗の本質を言い当てています。最初の接触では、相手に負担をかけないことが何より優先されます。
スマートフォンで見たときにだけ起きる取りこぼし
いまや訪問者の多くは、スマートフォンからサイトを見ます。ところが、社内でサイトを確認するのはパソコンの大きな画面です。この差が、気づかれない取りこぼしを生みます。パソコンでは自然に見える配置が、小さな画面では要点が下のほうに押しやられ、最初の画面に肝心の一文が入っていないことがあります。
確かめ方は簡単で、自分のスマートフォンで自社サイトを開き、スクロールせずに見える範囲だけを見てください。そこに「これは自分のためのサイトだ」と分かる言葉と、次に進むボタンが入っているか。入っていなければ、多くの訪問者は肝心な部分を見る前に離れています。パソコンで完璧に見えていても、小さな画面での見え方を確かめない限り、この取りこぼしには気づけません。
| 小さな画面で起きること | 訪問者への影響 | 直し方 |
|---|---|---|
| 最初の画面に要点が入らない | 肝心な一文を見る前に離れる | 悩みを言い当てる一文を最上部へ |
| ボタンが下に押しやられる | 次の一歩が見つからない | 主となるボタンを上のほうに置く |
| 文字が詰まって読みにくい | 読む気をなくす | 一文を短く、余白を広げる |
| 電話番号が押しても反応しない | 連絡の手段を失う | 番号を押すと発信できるようにする |
実績や証拠の見せ方を変える
引き算をすると、実績紹介を削ることになります。ただし、証拠そのものが不要になるわけではありません。訪れた人は「本当にこの会社で解決できるのか」という不安を抱えていて、それを消すのが証拠の役割です。大切なのは、量よりも置き方です。会社の自慢として並べるのか、訪問者の不安に答える形で差し出すのかで、同じ実績でも効き方が変わります。
効くのは、訪れた人が自分を重ねられる証拠です。同じ業種、同じ規模、同じ悩みを抱えていた相手の事例が1つあれば、抽象的な受賞歴をいくつ並べるよりも心が動きます。「うちと同じような会社が、ここで解決できたのか」と思ってもらえれば、それが行動への後押しになります。
| 証拠の種類 | ありがちな置き方 | 効く置き方 |
|---|---|---|
| お客様の声 | 抽象的な感謝の言葉を羅列 | 解決前の悩みと解決後を具体的に |
| 実績の数 | 累計の件数だけを大きく出す | 読者と同じ業種の事例を1つ添える |
| 受賞や資格 | 最初の画面で自慢する | 不安を消す補足として後ろに置く |
証拠を集めるときは、うまくいった話だけを飾って並べないでください。訪れた人は、良いことばかり書かれた声を身構えて読みます。むしろ、最初は不安だった、ここで迷った、という率直な言葉が添えられているほうが、同じ不安を抱える読者の心に届きます。完璧に見せようとするほど、かえって信じてもらいにくくなる。証拠の見せ方にも、謙虚さがそのまま効きます。
公開直後にやる小さな検証
リニューアルを公開したら、そこからが本番です。作った案が正しかったかどうかは、公開してみないと分かりません。大がかりな検証は要りません。最初の画面の一文を月に一度見直す、問い合わせフォームの項目を1つ減らしてみる、といった小さな調整を続けるだけで、数字は少しずつ動きます。
このとき、一度に複数の場所を変えないでください。同時に3か所直すと、数字が動いても、どの変更が効いたのか分からなくなります。1か所ずつ変えて、2週間から1か月ほど様子を見る。この地味な繰り返しが、感覚に頼らないサイト改善のいちばん確実な進め方です。作って納品したら終わり、という発想を手放したところから、ウェブサイトは成果を出す道具に変わっていきます。
入り口を増やすとき、広告と検索のどちらから育てるか
見つけてもらう層で止まっているなら、入り口を増やす作業に入ります。入り口には大きく2種類あり、お金で時間を買う広告と、時間をかけて資産を育てる検索です。どちらから手をつけるべきかは、いま置かれている状況で変わります。すぐに反応がほしくて、当面の広告費を用意できるなら、広告が早く効きます。逆に、広告費を継続的に払い続けるのが難しいなら、検索で拾われる記事を少しずつ積み上げる方が、長い目で見て軽くなります。
気をつけたいのは、行動する層が整っていないうちに広告だけを回すことです。先に触れたとおり、出口が詰まったサイトへ広告で人を流し込むと、費用に見合った成果は返ってきません。広告を始めるなら、その前にトップページの最初の画面と問い合わせフォームを整えておく。この順番を守るだけで、同じ広告費でも返ってくる問い合わせの数が変わります。検索からの入り口づくりは、記事が育つまで数か月かかりますが、育ったあとは広告のように払い続けなくても人を運び続けてくれます。
| 入り口の種類 | 向いている状況 | 始める前に整えること |
|---|---|---|
| 広告で連れてくる | すぐ反応がほしい・費用を用意できる | 出口の詰まりを先に直す |
| 検索で拾われる | 継続の広告費が難しい・長く育てたい | 顧客の言葉で記事を用意する |
| 紹介で入ってもらう | 既存の顧客との関係が良い | 紹介したくなる仕組みを添える |
「とりあえず全部載せる」が招くもう1つの損失
情報を足すことの害は、訪問者を迷わせるだけにとどまりません。検索の面でも損をします。似たような内容の薄いページをいくつも作ると、検索する側の道具から見て「どのページを出せばいいのか分からない会社」になり、どのページも上位に表示されにくくなります。1つのテーマについて、力を込めた厚いページが1枚あるほうが、薄いページが5枚あるよりも見つけてもらいやすくなります。
これは棚卸しの話ともつながります。役割の重なるページを見つけたら、思い切って1つにまとめてください。まとめることで内容が厚くなり、検索でも拾われやすくなります。ページを減らすことが、かえって見つけてもらう力を強くする。足し算の発想からは出てこない考え方ですが、ここでも引き算が効きます。
リニューアルの判断を社内で通すときの説明
ここまでの考え方を社内で共有しようとすると、多くの場合、抵抗にあいます。「せっかく作ったのに削るのか」「うちの強みを載せなくていいのか」という声です。この抵抗を越えるには、削る理由を訪問者の側から説明することです。削る目的は、訪れた人が迷わず目的に着けるようにすることだと伝えると、話が通りやすくなります。会社の都合で減らすわけではありません。
もう1つ有効なのは、いきなり全部を変えず、1か所だけ試して数字を見せることです。トップページの最初の一文を書き直して、2週間後に問い合わせの数を見せる。小さな成功を1つ作れば、次の変更への合意はずっと得やすくなります。理屈で説得するより、動いた数字を見せるほうが、社内の空気は早く変わります。
| 社内で出やすい声 | その裏にある不安 | どう応じるか |
|---|---|---|
| せっかく作ったのに削るのか | 労力が無駄になる感覚 | 下げるだけで消さないと伝える |
| 強みを載せなくていいのか | 自社の価値が埋もれる恐れ | 不安を消す証拠として後ろに置く |
| 本当に効果があるのか | 変更が空振りする心配 | 1か所だけ試して数字を見せる |
よくある質問
Q. リニューアルしたばかりです。もう一度作り直すべきでしょうか。
作り直す必要はありません。いま止まっている層を1つ特定して、そこだけに手を入れてください。多くの場合、トップページの最初の画面と問い合わせフォームを直すだけで、数字は動き始めます。全体を作り直すのは、その調整をやり切ってからで十分です。
Q. アクセス数は少ないのですが、まずデザインを直すべきですか。
アクセス数が少ないなら、先に手を入れるのは入り口です。見る人がいない状態でデザインを磨いても、成果は動きません。検索で拾われる記事を増やす、既存の顧客に紹介してもらう、といった入り口を増やす作業を先に進めてください。
Q. 情報を減らすと、不親切に思われないでしょうか。
訪れた人にとっての親切は、迷わず目的にたどり着けることです。情報の多さが、そのまま親切になるとはかぎりません。知りたい一点にすぐ届くほうが、親切に感じられます。減らすのが不安なら、まず主となる情報を目立たせ、それ以外を下の階層へ移すところから始めてください。消さなくても、順番を変えるだけで効果があります。
Q. 問い合わせのボタンはいくつ置くのがよいですか。
主となる行動のボタンは、押してほしい1種類に絞ってください。同じページに種類の違うボタンが並ぶと、訪れた人はどれを押すか迷い、結局どれも押しません。同じ行動へ進むボタンをページの上と下に置くのは問題ありません。散らばらせず、行き先を1つにすることが大切です。
Q. 効果が出るまでどれくらいかかりますか。
トップページの最初の画面や問い合わせフォームの調整は、公開したその日から効きます。一方で、検索から見つけてもらう入り口づくりは、数か月単位で育っていく作業です。すぐ効く調整と、時間をかけて育てる作業を分けて考えると、途中で焦って手を止めずにすみます。
会社案内のサイトと、問い合わせを生むサイトは役割が違う
もう1つ、リニューアルの前に整理しておきたいことがあります。いま持っているサイトが、そもそも何のためのサイトなのかという点です。取引先や求職者が会社の概要を確かめるための会社案内と、まだ会ったことのない見込み客から問い合わせを生むための集客の窓口は、同じ1つのサイトの中で役割が違います。この2つを混ぜたまま作り直すと、どちらつかずのサイトになります。
会社案内としての役割なら、沿革や事業内容をきちんと載せることに意味があります。すでに会社を知っている人が確かめに来るからです。一方、集客の窓口としての役割では、まだ会社を知らない人の悩みに最初の一文で応える必要があります。同じトップページでも、どちらの読者を先に想定するかで、載せる言葉が変わります。問い合わせを増やしたいのであれば、まだ会社を知らない人を主に置いて設計してください。会社を知っている人向けの情報は、その下や別のページに回しても遅くありません。
| 役割 | 想定する読者 | 最初の画面に置くもの |
|---|---|---|
| 会社案内 | すでに会社を知っている人 | 沿革・事業内容・所在地 |
| 集客の窓口 | まだ会社を知らない見込み客 | 悩みを言い当てる一文と次の一歩 |
リニューアルで問い合わせを増やしたいなら、優先すべきは集客の窓口としての役割です。会社案内の情報を減らすことに抵抗があるかもしれませんが、その情報を必要とする人は、下までスクロールしてでも探してくれます。最初の画面という、いちばん見られる場所は、まだ会社を知らない人のために空けておく。この割り切りができるかどうかが、作り直しの成否を分けます。
まとめ
ホームページをリニューアルしたのに問い合わせが増えないのは、見た目を新しくする作業と、成果を生む設計の作業が別物だからです。社内で評判が良いのに数字が動かないなら、評価されているのは見た目の側で、顧客が反応する設計の側には手が入っていません。
やるべきことは、足すのをやめて引くことです。問い合わせが動くサイトは、訪れた人に対して謙虚です。言いたいことを引っ込めて、相手が知りたい一点だけを差し出し、進む道を1本に絞る。この転換は、作り直さなくても今日から始められます。まず止まっている層を1つ特定し、トップページの最初の画面か問い合わせフォームのどちらかに手を入れてください。それが、費用を無駄にしないための最短の一歩です。
ここまで読んで、直す場所が多くて気が重くなったかもしれません。全部を一度にやる必要はありません。この記事で挙げた点検のうち、いちばん手をつけやすい1か所を今日だけ選んでください。最初の画面の一文でも、フォームの項目を1つ減らすことでも構いません。小さな一歩でも、動かした数字は必ず次の判断材料になります。止まっている原因は、たいていの場合、直せない難問ではありません。まだ手をつけていないだけの、ごく小さな箇所です。順番に1つずつ手を入れていけば、必ず動き出します。
今日できる点検
| 点検する場所 | いま確かめること | 今日やること |
|---|---|---|
| トップの最初の画面 | 訪問者の悩みを言い当てているか | 顧客の言葉で見出しを1文書き直す |
| 次の一歩 | 主となる行動が1つに絞れているか | 出口を数え、主役以外を下げる |
| 問い合わせフォーム | 項目が多すぎないか | 3つか4つまで削る |
| アクセス解析 | どの層で止まっているか | 離脱の多いページを1つ特定する |
| サーチコンソール | 検索結果に出ているか | 表示回数と検索語を確かめる |
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