AIが「もっと便利に」なる理由
「エクセルのデータを見ながら分析して」
「社内の資料を参考に回答して」
「このSlackの会話履歴について教えて」
現在のAIには、このような当たり前の依頼ができません。まるで目隠しをされた状態で会話をしているようなものです。そのため、私たちは必要な情報をいちいちコピー&ペーストで伝える必要がありました。
これを解決するために、Anthropic社が2024年11月に発表したのがMCP(Model Context Protocol)です。
MCPって何?レゴブロックで例えると…
MCPを理解するには、レゴブロックの例えが分かりやすいでしょう。
従来のAIシステムは、特殊な形のブロックだけを組み合わせられる「限定的なレゴ」のようなものでした。新しいものを追加しようとすると、専用のパーツを一から作る必要がありました。
一方、MCPは「標準的なレゴブロック」のようなものです。どんなブロックでも、決められた接続方式さえ守れば、簡単に組み合わせることができます。
例えば:
- データベースという青いブロック
- Slackという赤いブロック
- Googleドライブという緑のブロック
これらを、MCPという標準的な接続部品で自由に組み合わせられるようになったのです。
実際にどう便利になるの?
山田さん(仮名)は中小企業の総務部で働いています。毎月の経費精算で、こんな作業を行っていました:
- エクセルの経費データを確認
- Slackで各部署に問い合わせ
- 過去の資料を検索
- 経理システムにデータを入力
- 報告書を作成
この作業に、毎月丸2日を費やしていました。
MCPを使うと:
「先月の経費データを分析して、気になる点があれば各部署のSlackの会話も確認して、報告書を作成して」
たったこれだけの指示で、AIが必要な情報を自動で収集・分析し、レポートを作成できるようになります。
どうやって使うの?
現在、MCPはまだ開発の初期段階です。ただし、以下の企業ですでに活用が始まっています:
- Block(旧Square):決済サービス大手
- Replit:プログラミング学習プラットフォーム
- Apollo:開発ツール提供企業
使い方は、以下の3ステップです:
- Claudeデスクトップアプリをインストール
(普通のアプリをインストールするのと同じ感覚です) - 使いたいツールとの連携設定
(例:GoogleドライブやSlackのログイン情報を入力) - 自然な日本語で指示を出す
(例:「先月のミーティングの議事録を要約して」)
安全性は大丈夫?
「社内の情報をAIに見せて大丈夫なの?」という心配は当然です。
MCPは、鍵付きの引き出しのような仕組みを持っています。例えば:
- 経理部のデータは経理部の人だけ
- 企画書は関係者だけ
- 社外秘情報は指定した人だけ
このように、細かくアクセス権限を設定できます。また、誰がいつどのデータを見たのか、全て記録が残ります。
これからどうなる?
現時点では、主にパソコン上のローカル環境(自分のPC内)での利用が中心です。今後、以下のような発展が期待されています:
- より多くのツールとの連携
- クラウドでの本格的な利用
- スマートフォンでの利用
まとめ
MCPは、「AIに目隠しを外してあげる」技術です。今までバラバラだったシステムやデータを、安全に、簡単につなげることができます。
特に、
- 毎月の定型作業に時間を取られている方
- 複数のシステムを行き来する作業が多い方
- AIをもっと活用したいけど方法がわからない方
にとって、大きな可能性を秘めた技術といえるでしょう。