ホームページのメニューを左から順に読んでいくと、2番目か3番目に「採用情報」が入っている。トップページを開いた最初の画面では、その文字だけが赤や橙で塗られていて、いちばん強く目に入る。中小企業のサイトを順番に開いていくと、この並びに何度も出会います。
人が採れないからです。求人媒体に出しても応募が来ない、来ても続かない。だから自社サイトで採用の情報を厚くしようとする。経営判断としては筋が通っています。
ところが、その同じサイトで新規のお客様も取ろうとしている会社が、とても多い。問い合わせが月に何件ほしいという目標もある。そして問い合わせは増えていない。相談を受けて画面を一緒に見ていくと、採用の情報がお客様の導線の前に立っている場面に、かなりの確率でぶつかります。
この記事は「採用ページをやめましょう」という話ではありません。採用のページは要ります。人が採れなければ受注しても回せないからです。ここで扱うのは、採用の情報をサイトのどこに置き、それぞれのページの主語を誰にするかという設計の話です。置き場所と主語を決め直すだけで、作り直しをせずに導線が戻ることがあります。
読み終えたときに、自社のサイトで直す場所が1つ決まっている状態を目指して書きます。
採用ページを開いた瞬間に、お客様は静かに帰っている
トップページを開いた2人は、別々のものを探している
同じトップページを、2種類の人が開いています。1人は仕事を頼もうか迷っているお客様。もう1人は転職先を探している求職者です。この2人が最初の3秒で目を走らせる場所は、まったく違います。
お客様が探しているのは、自分の困りごとの答えです。「うちのこの状況で頼めるのか」「いくらぐらいなのか」「どこまでやってくれるのか」。この3つのどれかに触れる言葉を、画面の中から拾おうとしています。拾えないと、検索結果に戻ります。
求職者が探しているのは、自分がそこで働く姿です。「どんな人がいるのか」「何年目で何をしているのか」「休みは取れるのか」。会社の実績や技術力は、その手前の安心材料として見ますが、決め手にはなりません。
探しているものが違う、ということの重さ
この2人は、同じ言葉を読んでも違うものを受け取ります。「創業50年」という表示を、お客様は「潰れない会社だ」と読み、求職者は「古い会社だ」と読むことがある。「若手が活躍しています」という表示を、求職者は魅力と読み、お客様は「担当が若い人になるのか」と読むことがある。
1枚の画面で両方に良く読ませようとすると、どちらにも半端に届きます。強く言い切れなくなるからです。
| トップページを開いた人 | 最初の3秒で探しているもの | 見つからないと起きること |
|---|---|---|
| 仕事を頼もうか迷っているお客様 | 自社の困りごとに触れた言葉と対応範囲 | 検索結果に戻り他社を開く |
| 相見積もりの2社目として見ている人 | 実績の具体と依頼の流れ | 比較表から外れる |
| 転職先を探している求職者 | 働いている人の顔と1日の流れ | 求人媒体の情報だけで判断する |
| 社名を聞いて確認しに来た人 | 実在する会社かどうかの証拠 | 不安が残ったまま商談に来る |
| 取引先の担当者 | 連絡先と会社概要 | 電話で聞かれる手間が増える |
お客様は「帰った」ことを教えてくれない
問い合わせが減ったとき、原因はまず商品や価格に求められます。採用ページが理由で帰った人は、そのことを誰にも言いません。アクセス解析の数字にも「採用ページのせいで帰りました」とは出ない。だから、この問題は長いあいだ放置されます。
気づく手がかりは、トップページを見た人がその次にどこへ行ったかを見ることです。トップページの次に採用ページが来ている割合が高いのに、応募は増えていない。この形が出ていたら、お客様向けの導線が採用の情報に食われている可能性があります。
同じ1枚で2人に話しかけると、主語がぶれていく
語りかける相手を決めないと「当社は」で始まる
誰に向けて書くかを決めずにトップページの文章を書くと、主語は自然に「当社は」に寄ります。読み手を特定できないので、自分の話をするしかなくなるからです。
「当社は創業以来、地域のお客様と共に歩んでまいりました」という一文は、お客様にも求職者にも当たりません。当たらないから、次の一文でも同じ調子が続く。トップページ全体が会社案内の文章になり、誰の困りごとにも触れないまま画面が終わります。
主語を「あなた」に変えると、相手を1人に絞る必要が出てきます。「◯◯でお困りではありませんか」と書いた瞬間に、それは求職者向けの文ではなくなる。この絞り込みが起きないまま、両方に配慮した文章が積み上がっていく状態を、私は現場で何度も見ています。
写真が両方を向くと、どちらの顔にもならない
文章より先に崩れるのが写真です。トップページの一番上に置く1枚を、お客様向けの現場写真にするか、社員の集合写真にするかで迷い、結局その両方を並べる。画面の上から下まで、性格の違う写真が交互に並びます。
集合写真は求職者に効きます。腕を組んで並んだ社員の写真を見て、お客様が発注を決めることはあまりない。逆に、施工中の手元を寄りで撮った写真は、求職者には「大変そうだ」としか映らないこともあります。
メニューが増えると、どれも押されなくなる
採用の情報を厚くしていくと、メニューの項目が増えます。「採用情報」の下に「募集要項」「先輩の声」「福利厚生」がぶら下がる。全体のメニューが7つを超えたあたりから、押される割合は目に見えて落ちます。選択肢が多いと人は選べません。
| 同居しているサイトの状態 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| トップページの主語が「当社は」 | お客様の困りごとに触れないまま画面が終わる | 最初の1文をお客様への問いかけに書き換える |
| 集合写真と現場写真が交互に並ぶ | どちらの読者にも印象が残らない | トップの主要な写真をお客様向けに統一する |
| メニューが8項目以上ある | どの項目も押される割合が落ちる | 採用をメニューの末尾かフッターへ移す |
| 採用の見出しが最初の画面に入っている | お客様向けの見出しが画面の外へ押し出される | 最初の画面を対応内容と実績だけにする |
| お問い合わせが応募も兼ねている | 営業と採用の連絡が同じ箱に混ざる | 受け口を分けて件名で振り分ける |
お客様と求職者では、サイトに求めるものがここまで違う
判断の材料が違う
お客様が最後に見るのは、自分と似た状況の事例です。同じ業種、同じ規模、同じ困りごと。そこに近い事例が1つあれば、話が早くなります。金額の目安、期間、担当の体制。仕事を頼む判断は、失敗したときの損失を減らす方向で動きます。
求職者が最後に見るのは、そこで働いている人です。何年目の人が何をしているか、どんな失敗が許されるのか、辞めた人はなぜ辞めたのか。働く判断は、自分の時間をどう使うかの選択なので、共感の方向で動きます。
判断にかかる時間が違う
お客様の判断は、案件によっては数日で決まります。困りごとが急ぎであるほど短い。修理や急な依頼なら、開いた画面で電話番号を探して、その場でかけます。
求職者の判断は長い。最初に見てから応募するまでに数週間から数か月かかることが普通で、その間に何度も同じページに戻ってきます。だから採用のページは、繰り返し読まれる前提で作る必要があります。この性質の違いが、ページの作り方をまったく別のものにします。
読み終わったあとの行動が違う
お客様は、読み終わったら問い合わせるか帰るかの2択です。中間がない。求職者には「気になるからブックマークして様子を見る」という中間の行動がある。この中間があるかどうかで、ページに置くべき出口の設計が変わります。
| 比べる観点 | お客様の場合 | 求職者の場合 |
|---|---|---|
| 最後に見るもの | 自分と似た状況の事例 | 働いている人の顔と1日の流れ |
| 判断が動く方向 | 失敗したときの損を減らす | 自分の時間の使い方に共感できるか |
| 判断にかかる時間 | その日から数日 | 数週間から数か月 |
| 読み終わったあと | 問い合わせるか帰るかの2択 | 様子を見るという中間がある |
| 戻ってくる回数 | 1回か2回 | 何度も戻ってくる |
| 効く言葉の質 | 具体的な数字と範囲 | その場の空気が伝わる描写 |
同居させたときに、サイトの中で具体的に何が起きるか
メニューの枠を1つ奪う
中小企業のサイトで、押されるメニューの数は限られます。上から数えて5つ目までで、押される回数の大半が終わる。ここに「採用情報」が入ると、お客様向けの1項目が押し出されます。押し出されるのはたいてい「よくあるご質問」や「料金の目安」で、その2つは問い合わせの直前に読まれるページです。
トップページの縦を奪う
トップページは縦に長くなりがちです。上から、大きな写真、あいさつ、サービス、実績、そして採用。採用の枠が中ほどに入ると、その下にあった事例や問い合わせの案内が、さらに下へ押し出されます。画面の下へ行くほど読まれる割合は落ちるので、押し出された分だけ読まれなくなります。
内部リンクが採用ページに集まる
全ページ共通のメニューやフッターに採用ページへの案内を入れると、サイト内のリンクが最も多く集まるページの1つが採用ページになります。検索エンジンから見ると、そのサイトで重要なページの上位に採用ページが並ぶ。これは意図した重み付けとは限りません。
お問い合わせフォームが兼用になる
「お問い合わせ」の中に「ご用件」という選択肢があり、その中に「採用について」が混ざっている。この形にすると、営業の問い合わせと応募が同じ受信箱に落ちます。急ぎの見積もり依頼が、応募メールに埋もれて半日遅れる。この遅れは、そのまま失注につながります。
| 同居によって奪われるもの | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| メニューの上位5枠 | 料金やよくある質問が押し出される | 採用をメニューの最後尾に移す |
| トップページの縦の面積 | 事例と問い合わせ案内が下へ流れる | 採用の枠をフッター近くへ下げる |
| サイト内のリンクの重み | 採用ページが重要ページとして扱われる | 共通部分からの案内を1か所に絞る |
| お問い合わせの受け口 | 見積もり依頼が応募に埋もれる | 応募の受け口を別に立てる |
| 更新の手間 | 採用の更新に時間が取られ実績が止まる | 更新の担当と頻度を別々に決める |
社名で検索した人が、採用ページに着地している
指名検索は、最も濃い流入です
検索の入口には2種類あります。「◯◯市 板金 修理」のように困りごとで探す検索と、「◯◯工業」のように社名で探す指名検索です。指名検索でやってくる人は、すでに社名を知っている。紹介を受けた、看板を見た、名刺をもらった。この人たちは、他の流入よりはるかに問い合わせに近い場所にいます。
その濃い流入が、採用ページに着地していることがあります。
なぜ採用ページが上位に出るのか
理由は単純です。社名と一緒に検索される言葉に「採用」「求人」「評判」が多く、その組み合わせに最も合うページが採用ページだからです。加えて、採用ページはサイト内リンクが集まりやすく、求人媒体からの外部リンクも付きやすい。検索エンジンは、そのページを社名に関係の深いページとして扱います。
結果として、社名で検索した取引先候補が、募集要項の画面を開くことになる。そこには給与の幅と勤務時間と休日が並んでいます。仕事を頼む判断の材料は、1つもありません。
Search Consoleで確かめる手順
推測で語る必要はありません。Google Search Consoleを開いて、検索結果のレポートで社名を含む検索語を絞り込み、その検索語がどのページに着地しているかを見ます。ページ別の表示回数と押された回数を並べれば、指名検索の受け皿がどこになっているかは1分で分かります。
採用ページが指名検索の受け皿になっていた場合、対処は2つあります。1つ目は、会社概要のページを社名の検索に合う形へ整えて受け皿を作り直すこと。2つ目は、採用ページの上部にお客様向けの案内を1本だけ置いて、迷った人を戻すことです。
| 指名検索の着地先 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| トップページ | 設計どおりに受けられている | 最初の画面に事例と連絡先を置く |
| 採用ページ | 取引先候補が募集要項を読んでいる | 会社概要を整え上部に案内を1本置く |
| 会社概要ページ | 実在の確認までは取れている | 事例と問い合わせへの線を足す |
| 古いお知らせ記事 | 更新が止まった印象を与えている | 該当記事から主要ページへ案内を出す |
| 外部の求人媒体 | 自社サイトが検索結果に出ていない | 社名を含む見出しと説明文を見直す |
分ける方法には、大きく4つの選択肢がある
1つ目、同じサイトの下層に置く
いまのサイトの中に example.com/recruit/ のような場所を作り、そこに採用の情報をまとめる方法です。最も手数が少なく、費用も抑えられます。ドメインが1つなので、検索評価も分かれません。
この形の弱点は、共通のメニューとデザインを引きずることです。お客様向けの見た目のまま採用の話をするので、求職者に強く刺さる画面にはしにくい。募集要項と写真が数枚という規模なら、これで十分に足ります。
2つ目、サブドメインで別サイトにする
recruit.example.com のように、同じドメインの下で別のサイトを立てる方法です。デザインもメニューも独立させられるので、求職者だけに向けた画面が作れます。管理画面も分けられるため、採用の更新で本体を触る必要がなくなります。
弱点は、検索エンジンから別サイトとして扱われる場合があることです。本体が積み上げてきた評価をそのまま引き継げるとは限らず、立ち上がりに時間がかかります。
3つ目、完全に別ドメインで作る
まったく新しいドメインを取って、採用専用のサイトを作る方法です。採用のブランドを本体から切り離して打ち出したい場合や、複数のグループ会社でまとめて採用する場合に選ばれます。
弱点は大きい。評価をゼロから積むことになり、本体との関係を検索エンジンにも人にも伝えにくくなります。中小企業が単独でこれを選ぶ理由は、あまり見つかりません。
4つ目、求人媒体に寄せて、サイトには入口だけ置く
採用の情報の本体を求人媒体側に置き、自社サイトには「採用情報はこちら」という案内を1つ置くだけにする方法です。制作の手間がほぼかからず、本体サイトはお客様向けのまま保てます。
弱点は、媒体を離れた瞬間に何も残らないことと、媒体の枠の中でしか自社を語れないことです。それでも、採用が年に数名の規模なら、この形が最も費用対効果に合うことがあります。
| 選ぶ形 | 向いている状況 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 同じサイトの下層に置く | 募集が1職種から2職種で通年ではない | 共通メニューの見た目を引きずる |
| サブドメインで別サイト | 職種が3つ以上あり通年で採用する | 検索評価の立ち上がりに時間がかかる |
| 完全に別ドメイン | グループでまとめて採用ブランドを立てる | 本体との関係が伝わりにくくなる |
| 求人媒体に寄せる | 採用が年に数名で担当者がいない | 媒体をやめると何も残らない |
| 下層に置いて見た目だけ変える | 費用は抑えたいが訴求は分けたい | メニューの扱いを決めておく |
検索評価の観点から、どれを選ぶか
下層に置くと、評価が1つのドメインに集まる
同じドメインの下にページを増やしていくと、そのドメイン全体に対する評価の中で採用ページも扱われます。新しく作ったページが検索結果に出てくるまでの時間は、独立したサイトを立てるより短くなります。
その代わり、採用の情報が増えるほど、ドメイン全体の話題が採用の方向へ寄っていきます。お客様向けの記事が10本、採用の記事が40本という状態になると、そのサイトは検索エンジンから「採用の情報が主なサイト」として理解されていきます。
サブドメインは、独立と引き継ぎの中間にある
サブドメインは、状況によって同一のサイトとして扱われることもあれば、別サイトとして扱われることもあります。確実に評価を引き継ぐ前提で計画を立てると、外れたときの手戻りが大きい。引き継げないほうを前提に見積もっておくのが安全です。
本体サイトから採用サイトへ、採用サイトから本体サイトへ、両方向のリンクを分かる場所に置いておくと、人にとっても検索エンジンにとっても関係が伝わりやすくなります。
別ドメインは、社名検索で自社同士がぶつかる
別ドメインで採用サイトを作ると、社名で検索したときに本体サイトと採用サイトが並んで表示される場面が出てきます。どちらが本命か分からない状態は、それ自体が離脱の理由になります。
| 置き方 | 検索評価で起きること | 次にすること |
|---|---|---|
| 同じドメインの下層 | 評価が1つに集まり出るのが早い | 採用の記事が全体の半分を超えないよう保つ |
| サブドメイン | 引き継げる場合と引き継げない場合がある | 引き継げない前提で期間を見積もる |
| 別ドメイン | 社名検索で自社サイト同士が並ぶ | 本体を上位に保つ内部の設計を先に決める |
| 求人媒体に寄せる | 自社サイトの評価は動かない | 社名検索の受け皿を自社側に残す |
| 下層から後日サブドメインへ移す | 移した直後に順位が揺れる | 移す前に転送の設定を用意する |
分けたほうがよい規模と、同居のままでよい規模
採用ページが1枚で足りているうちは、分けない
募集している職種が1つか2つ、募集の時期が決まっていて年に一度か二度。この規模なら、サイトの下層に1枚置けば足ります。分けると、更新されない採用サイトが1つ増えるだけになります。
この段階でやるべきことは、その1枚の質を上げることと、メニューでの置き場所を下げることです。1枚しかないページのために、メニューの上位を使う必要はありません。
職種が3つ以上になったら、分ける検討に入る
営業と技術と事務で、伝えたいことも見せたい写真も違ってきます。3つの職種を1枚に詰め込むと、どの職種の人にも半分は関係のない情報を読ませることになる。ここまで来たら、分けたほうが読みやすくなります。
通年採用を始めたら、分けたほうが運用が楽になる
年中募集を出していると、更新の頻度が上がります。社員の紹介を足す、写真を差し替える、募集要項を直す。この作業のたびに本体サイトを触るのは、事故のもとです。管理を分けると、採用の担当者が本体を気にせず動けるようになります。
採用の専任者がいないなら、分けない
これがいちばん現実的な判断基準です。作った採用サイトを誰が更新するのかが決まっていないなら、分けた瞬間から放置が始まります。更新の止まった採用サイトは、応募を減らします。
| 自社の規模 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 職種1つ 募集は年に1度 | 採用ページが1枚あれば足りている | 同居のままメニューの位置だけ下げる |
| 職種2つ 募集は年に2度 | 1枚に情報が詰まって読みにくい | 職種ごとに下層ページを分ける |
| 職種3つ以上 通年で募集 | 本体の更新と採用の更新がぶつかる | サブドメインで分ける検討に入る |
| 新卒と中途の両方を採る | 語りかける相手が2つに割れている | 入口を2つに分け中身を別に作る |
| 採用の専任者がいない | 更新が止まる見込みが高い | 分けずに求人媒体へ寄せる |
採用ページから、逆にお客様がやってくることがある
働く人の顔は、発注する側にも効いている
採用ページを閉じるべきだ、という話に見えてきたかもしれませんが、実際には逆の動きも起きています。発注を検討している人が、採用ページを見て安心して問い合わせてくる場面があります。
理由は、採用ページにしか載っていない情報があるからです。社員が何人いるか、平均して何年勤めているか、どんな資格を持っている人がいるか。この3つは、外注先を選ぶ側にとって重要な材料です。サービス紹介のページには書かないのに、採用ページには堂々と書いてある。
とくにBtoBで、継続的に付き合う仕事を頼む場合、担当が変わらないかどうかは大きな関心事です。定着率の高さは、求職者より先に取引先に効いています。
それでも、入口としては設計しない
効いているからといって、採用ページをお客様の入口として設計するのは筋が違います。採用ページを開いたお客様は、たまたまそこに流れ着いただけで、そこを目指してきたわけではないからです。
やるべきことは、流れ着いた人を戻す線を1本引いておくことです。採用ページの終わりに「事業の内容についてはこちら」という案内を1つ置く。目立たせる必要はありません。探している人だけが押せれば十分です。
会社概要に、採用ページの情報を少しだけ移す
もう1つの手は、採用ページに眠っている情報のうち、お客様に効くものを会社概要へ移すことです。社員数、平均勤続年数、保有資格の一覧。この3つを会社概要に載せておくと、採用ページまで行かずに済みます。
| 採用ページにある情報 | お客様への効き方 | 次にすること |
|---|---|---|
| 社員数と組織の構成 | 依頼を受け切れる規模かの判断材料 | 会社概要へ移して両方に載せる |
| 平均勤続年数 | 担当が変わらないかの安心材料 | 会社概要に1行として足す |
| 保有資格の一覧 | 技術の裏付けとして読まれる | サービス紹介の下に置き直す |
| 社員インタビュー | 誰が担当するかの想像がつく | 採用ページに残し案内だけ出す |
| 福利厚生や休日の制度 | お客様の判断には効かない | 採用ページの中だけに置く |
置き場所より先に決めるのは、それぞれのページの主語
トップページの主語は、お客様です
集客を目的にしたサイトのトップページで、主語になるのはお客様です。「◯◯でお困りの方へ」から始まり、その困りごとをどう解くかが続き、最後に問い合わせの案内が来る。この並びが崩れていないかどうかを、まず確かめます。
確かめ方は簡単です。トップページの最初の画面に書かれている文を声に出して読み、その文が誰に向いているかを言ってみる。「当社」で始まっていたら、主語はお客様ではありません。
採用ページの主語は、求職者です
採用ページで主語になるのは求職者です。「未経験からでも入れるのか」「何年でどうなるのか」。会社の歴史や社長のあいさつは、その答えの後ろに置きます。
採用ページの冒頭が会社紹介から始まっている場合、それは会社案内の使い回しです。求職者は、会社の紹介を読みに来たわけではありません。
主語が決まると、置き場所は自動的に決まる
2つのページの主語を先に決めると、置き場所の議論はほとんど終わります。主語が違うページを1枚に混ぜられないことがはっきりするからです。分けるか同居させるかは、その後で規模に応じて選べば済みます。
| ページの種類 | 主語にすべき相手 | 置いてはいけないもの |
|---|---|---|
| トップページ | 仕事を頼もうか迷っている人 | 最初の画面に採用の見出し |
| サービス紹介 | 自分の困りごとを解きたい人 | 社内の体制や理念の長い説明 |
| 会社概要 | 実在と規模を確かめたい人 | 募集要項そのもの |
| 採用の入口 | 働く場所を探している人 | 会社案内の使い回しの冒頭 |
| お問い合わせ | 連絡を取ろうと決めた人 | 応募と兼用の選択肢 |
分けたあとに起きる、よくある失敗
採用サイトを作って、本体が更新されなくなる
新しく作ったほうに手が入り、古いほうが止まります。採用サイトを立ち上げた半年後に本体サイトを見ると、最後のお知らせが立ち上げ前の日付で止まっている。この状態は、指名検索で来た人に「今も動いているのか」という疑いを持たせます。
分ける決定をするときに、本体の更新を誰が何日おきにやるかを一緒に決めておくと、この失敗はかなり防げます。
情報が食い違う
本体の会社概要では社員が28名、採用サイトでは35名。所在地の表記が違う、電話番号の片方が古い。分けると、同じ情報を2か所で管理することになります。
対策は、同じ情報を2か所に書かないことです。会社概要は本体にだけ置き、採用サイトからはそこへ案内を出す。書く場所を1つに決めておけば、食い違いは起きません。
計測が分断される
アクセス解析の設定を分けると、本体から採用サイトへ移動した人が、別の訪問者として数えられます。どこから来た人が応募したのかが追えなくなる。分けるときは、計測の設定を先に決めておきます。
採用サイトを作ったのに、応募の受け口が本体のままになる
意外と多いのがこれです。採用サイトの「応募する」を押すと、本体サイトのお問い合わせフォームに飛ぶ。せっかく分けた画面が、最後の一歩で元に戻ります。
| 分けたあとの状態 | いま起きていること | 次にすること |
|---|---|---|
| 本体の更新が止まっている | 指名検索の来訪者に不信を持たれる | 本体の更新の担当と頻度を決める |
| 社員数や住所が食い違う | どちらが正しいか分からなくなる | 共通情報は本体にだけ置き案内で繋ぐ |
| 計測が別々になっている | 応募の経路が追えない | 計測の設定をまとめてから公開する |
| 応募が本体のフォームに戻る | 分けた効果が最後で消える | 応募の受け口を採用側に用意する |
| 両方向のリンクがない | 関係が人にも検索にも伝わらない | 目立つ場所に相互の案内を置く |
いまのサイトを測る、3つの手順
手順1、メニューの並びを紙に書き出す
自社サイトのメニューを、左から順にそのまま紙に書きます。上位5つの中に採用が入っていたら、そこがまず直す場所です。書き出すと、お客様が問い合わせの前に読むページがメニューから消えていることにも気づきます。
手順2、トップページの縦を測る
トップページを上から下までスクロールして、どこに何があるかを順番に書き出します。お客様向けの内容が終わる前に採用の枠が入っていたら、その枠を下へ動かします。事例と問い合わせの案内は、採用より上に置きます。
手順3、流入と着地を分けて見る
Search Consoleで、社名を含む検索語と、困りごとの検索語を分けて見ます。それぞれがどのページに着地しているかを表にすると、いまのサイトが誰の受け皿になっているかがはっきりします。
あわせて、アクセス解析でトップページの次に見られているページを確認します。ここに採用ページが上位で出ていて、応募が増えていない場合、お客様向けの導線が食われています。
手順4、フォームの受信箱を開く
過去3か月の問い合わせを開いて、営業の問い合わせと応募がどれくらいの割合で混ざっているかを数えます。応募が半分を超えていたら、受け口を分ける時期に来ています。
| 測る場所 | 見つかる症状 | 次にすること |
|---|---|---|
| メニューの並び | 上位5つに採用が入っている | 採用を末尾かフッターへ移す |
| トップページの縦 | 事例より上に採用の枠がある | 採用の枠を事例の下へ動かす |
| 指名検索の着地先 | 採用ページが受け皿になっている | 会社概要を整え案内を1本足す |
| トップの次に見られたページ | 採用ページが上位に出ている | 共通部分からの案内を1か所に絞る |
| 問い合わせの受信箱 | 応募が半分を超えている | 応募の受け口を別に立てる |
職種と規模から、置き場所を選ぶ早見表
迷ったときは、更新の担い手から逆算する
置き場所の判断で最後に効くのは、検索評価でも見た目でもありません。誰が更新するかです。手が空いていない会社が採用サイトを立てると、半年で放置されます。放置された採用サイトは、応募を減らすだけでなく、社名で検索した取引先にも古い会社という印象を与えます。
予算より、続けられるかどうかで決める
作るときの費用は一度きりですが、更新の手間は毎月かかります。毎月の手間を担える体制があるかどうかを先に確かめてから、置き場所を選びます。
| 自社の状況 | 選ぶべき置き場所 | 同時にやること |
|---|---|---|
| 社員10名未満 募集は不定期 | 本体の下層に1枚 | メニューの末尾へ移す |
| 社員10名から30名 職種2つ | 本体の下層に職種ごとの2枚 | 応募の受け口を分ける |
| 社員30名以上 通年で採用 | サブドメインで独立 | 相互の案内と計測を先に設計する |
| 複数拠点でまとめて採用 | サブドメインで独立 | 拠点ごとの入口を作る |
| 採用の担当がいない | 求人媒体に寄せて入口だけ置く | 社名検索の受け皿を自社に残す |
よくある質問
採用ページをメニューから外したら、応募が減りませんか
求職者の多くは、求人媒体か社名の検索から採用ページへ直接入ってきます。トップページのメニューを経由して採用ページに着く人は、思っているより少ない。メニューの末尾やフッターへ移しても、応募が目に見えて減る例はあまり見かけません。移す前後で、採用ページの表示回数を1か月ずつ比べて確かめるのが確実です。
採用サイトを別に作ると、本体の検索順位は下がりますか
採用ページを本体から外した分、そのドメインで扱う話題は減ります。ただし、それは採用に関する検索語での話です。お客様向けの検索語での順位が、採用ページを外したことで直接下がる理由はありません。むしろ、サイト全体の話題がお客様向けに揃うぶん、狙っている検索語との関係は分かりやすくなります。
サブドメインと別ドメインは、結局どちらがよいのですか
中小企業の規模なら、サブドメインを選ぶ場面が多くなります。別ドメインは、グループ全体で採用ブランドを立てる場合や、事業名と採用の打ち出しを完全に切り離す必要がある場合に限られます。判断に迷うなら、社名で検索したときに自社のサイトが2つ並ぶ状態を許せるかどうかで考えてみてください。
お問い合わせフォームは、本当に分ける必要がありますか
営業の問い合わせが週に数件ある会社なら、分けたほうが確実です。急ぎの見積もり依頼が応募メールに埋もれると、その1件がそのまま失注になります。分けるといっても、フォームを2つ用意して、送信先のアドレスを変えるだけで済みます。
採用ページに載せた社員の写真を、お客様向けのページでも使ってよいですか
使えます。担当者の顔が見えることは、外注先を選ぶ側にとって安心材料になります。ただし、使う写真の性格は変えます。採用ページでは職場の雰囲気が伝わる写真が効き、お客様向けのページでは仕事をしている場面の写真が効きます。同じ人物でも、撮る場面を変えたほうが両方に届きます。
まとめ
問われているのは採用ページの存在より、置き場所と主語です
採用ページは要ります。人が採れなければ、受注しても回せません。問題になるのは、その情報がお客様の導線の前に立っているときです。メニューの上位、トップページの中ほど、指名検索の受け皿。この3か所に採用の情報が入ってくると、集客用のサイトとしての働きが落ちます。
分けるかどうかは、規模と更新の担い手で決まる
職種が1つか2つで、募集が不定期なら、本体の下層に1枚で足ります。職種が3つ以上あって通年で採用しているなら、サブドメインで分けたほうが運用が楽になります。そして、採用の更新を担う人が決まっていないなら、分けないほうが安全です。
今日は、メニューの並びを1つ動かすところから
大がかりな作り直しをしなくても、直せる場所があります。メニューの中で採用の位置を下げる。トップページの採用の枠を事例の下へ動かす。問い合わせの受け口を分ける。この3つは、いまのサイトのまま今日から取りかかれます。
採用ページを削るという判断は要りません。誰に向かって話すページなのかを1枚ずつ決め直せば、置き場所は自然に決まります。
今日できる点検
15分で終わる5項目
自社のサイトを開いて、上から順に確かめてください。1項目あたり3分ほどで終わります。当てはまるものが1つでもあれば、そこが今日直す場所です。
| 点検する場所 | 当てはまったら | 今日やること |
|---|---|---|
| メニューを左から5つ数える | その中に採用が入っている | 採用を末尾へ移して1週間見る |
| トップページの最初の画面を読む | 主語が「当社は」になっている | 最初の1文をお客様への問いかけに直す |
| トップページを下へ送る | 事例より上に採用の枠がある | 採用の枠を事例の下へ動かす |
| お問い合わせの選択肢を見る | 用件に採用が混ざっている | 応募用の受け口を別に作る |
| Search Consoleで社名を絞る | 採用ページが着地先の上位にある | 会社概要を整え案内を1本足す |
点検のあとに決めること
点検で見つかった項目のうち、直すのは1つだけにしてください。同時に3つ動かすと、どれが効いたか分からなくなります。1つ動かして、2週間おいて、数字を見る。この進め方が、いちばん確実に前へ進みます。
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