「ホームページの目的なんて、集客に決まっている」。そう考えていた方ほど、いざ自社サイトを直そうとすると手が止まります。トップの写真を大きくすべきか、会社の歴史を載せるべきか、料金を先に出すべきか。どれも良さそうに見えて、最後の1つが選べない。
この「選べなさ」は、あなたの決断力の問題ではありません。ホームページの目的を、頭のなかで何個も同時に抱えているから起きています。この記事は、狙いを1つに絞り込み、読み終えたときに「自社サイトのどこを、どの基準で直すか」が1つ決まっている状態を作るために書きました。中小企業の経営者やサイト担当者が、明日そのまま使える形で並べます。
なぜ「目的は決めたはず」なのにサイトがぼやけるのか
制作会社との打ち合わせで「御社のサイトの狙いは?」と聞かれ、「会社を知ってもらって、商品も売りたいし、採用にも使いたい」と答えた経験はないでしょうか。この時点で、狙いは3つあります。3つとも大切です。だからこそ、どれも捨てられず、サイトは全部を少しずつ詰め込んだ形になります。
現場でよく聞くのが、こんな声です。
「うちのサイトは何のためにあるのか、社内で聞くと、全員から違う答えが返ってくる」
社長は信用のため、営業は問い合わせのため、人事は採用のためだと思っている。3人とも間違っていません。ただ、1枚のトップページは3人の期待に同時には応えられません。訪問者から見ると、何を伝えたいサイトなのかが分からず、そのまま離れていきます。
3つの狙いを1枚に詰め込むと、訪問者は迷子になる
訪問者がトップページを見て「自分に関係がある」と判断するまでの時間は、ほんの数秒です。その数秒のあいだに、信用の話と、商品の話と、求人の話が同じ大きさで並んでいると、脳は「これは誰に向けたページなのか」を処理しきれません。処理できないものは、危険がなくても、人は静かに閉じます。詰め込みは親切のつもりで、実際には離脱を招きます。
「あれもこれも」は、評価の基準が増えることと同じ
狙いが複数あると、ページの良し悪しを測るものさしも同じ数だけ増えます。この写真は信用のためには良いが、問い合わせにはつながらない。この文章は採用には効くが、商品の説明としては長すぎる。1つの要素を、3つの基準で同時に採点することになります。
採点基準がぶつかると、判断は先送りになります。そして「とりあえず全部載せる」という、いちばん決断を要しない選択に落ち着きます。ぼやけたサイトは、能力が足りないせいで生まれるのではありません。基準が多すぎるせいで生まれます。
狙いを1つに絞ると、サイトの判断が全部シンプルになる
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。ホームページの目的は、複数のなかから優先度を付けるものではありません。最終的に1つに絞り込むものです。1つに絞ると、その後のあらゆる判断が驚くほど軽くなります。
判断に迷ったとき、問いは1つになります。「この要素は、決めた狙いに訪問者を1歩近づけるか」。近づけるなら残す。近づけないなら、良く見えても後ろに回す。トップの写真も、会社概要の位置も、料金の出し方も、この1つの問いで答えが出ます。
「良いサイトの条件」を並べて悩んでいた状態から、「この1歩に効くか」だけを見る状態へ。同じ担当者でも、決断の速さと一貫性がまるで変わります。
「効くか効かないか」だけで、会議が短く終わる
狙いが1つ決まると、社内の議論のかたちが変わります。これまでは「このデザインが好きか嫌いか」で意見が割れていました。好みには正解がないので、声の大きい人の意見が通り、あとで揉めます。狙いという共通のものさしがあると、問いは「このデザインは決めた1歩に効くか」に変わります。好みの対立が、事実の確認に変わります。だから会議が短く終わり、決まったことが後から覆りません。
1つに絞っても、残りは消えない
「信用に絞ったら、売上や採用を捨てることになる」と心配になるかもしれません。捨てるのは狙いそのものではありません。トップページの最前列という、限られた場所だけです。絞った1歩を主役にしたうえで、他は下の階層や別ページで受け止めます。優先席を1つに決めても、席そのものを無くすわけではありません。
「目的」「目標」「役割」は何が違うのか
絞り込みの前に、言葉を揃えておきます。目的と目標と役割は、混ぜて使われがちですが、指すものが違います。ここが曖昧だと、狙いを決める会議が「数字の話」と「機能の話」に散らかります。
| 言葉 | 指すもの | 自社サイトでの例 |
|---|---|---|
| 目的 | サイトが最終的に訪問者へ起こしたい1つの変化 | 「相談してみよう」と思ってもらう |
| 目標 | そこに近づいているかを測る数字 | 相談の申し込み件数、資料の請求数 |
| 役割 | その変化を果たすためにページが担う働き | 不安を消す、事例を見せる、背中を押す |
| ターゲット | その1歩を届けたい相手 | 問い合わせ先を探している同業界の担当者 |
この記事で「1つに絞る」と言っているのは、いちばん上の目的です。目標の数字は、狙いが決まったあとに、結果を測るために置きます。順番を逆にすると、次の章の落とし穴にはまります。
言葉が揃うと、外注の指示も具体的になる
制作会社やライターに仕事を頼むとき、この4語が揃っているだけで指示の質が変わります。「かっこよくしてほしい」という頼み方が、「同業界の担当者に、相談してみようと思わせたい。そのために不安を消す事例を前に出してほしい」という頼み方に変わります。受け手は迷わず動けて、出来上がりのぶれも小さくなります。
中小企業がホームページを持つ目的の3つの型
中小企業庁の調査によると、企業がホームページを持つ理由として最も多いのは、自社紹介による信用力の向上です。次いで、販売促進や新規取引先の開拓、商品の説明、求人の募集が続きます。これらを大きくまとめると、狙いはおおむね3つの型に収まります。信用、売上、人材です。
| 狙いの型 | この型を選ぶ会社 | 次にすること |
|---|---|---|
| 信用の獲得 | 紹介や名刺交換のあとに検索され、実在と実力を確かめられる会社 | 実績、代表の考え、取引の流れを、飾らず具体的に見せる |
| 売上・申し込み | サイトから直接、相談や購入につなげたい会社 | 訪問者の不安を先回りで消し、次の1歩を1つだけ示す |
| 人材の確保 | 採用の応募を増やしたい、離職を減らしたい会社 | 働く人の言葉と1日の流れを、良い面も含めて正直に載せる |
この調査結果には、見落としてはいけない意味があります。最も多い答えが信用の獲得だということは、中小企業にとってサイトは、売り込みの道具である前に、実在と実力を確かめてもらう場だということです。名刺を受け取った相手、紹介された相手、看板を見た相手は、その足で社名を検索します。そこで見つからない、あるいは中身が薄いと、それだけで候補から外れます。信用の型が入口として強いのは、この確認の動きが、業種を問わず起きているからです。
型は「今いちばん困っていること」で選ぶ
どの型を選ぶかは、会社の今の痛みで決めます。3つの型は、優先順位で並べません。問い合わせは来るが受注が弱いなら信用、そもそも接点が少ないなら売上、人が足りず現場が回らないなら人材です。3つを均等に狙うのは、痛みが3倍のときの発想です。ふつうは、いちばん血が出ている場所を1つ選びます。
型が決まると、載せるコンテンツの取捨が決まる
信用を選べば、代表の顔と考え、取引先の顔ぶれ、失敗も含めた実例が前に出ます。売上を選べば、料金の考え方と相談の入口が前に出ます。人材を選べば、働く人の1日が前に出ます。型が1つ決まるだけで、迷っていた「載せる・載せない」の大半が自動的に片付きます。
複数の顔を持つ会社は、サイトを分けるという手もある
「どうしても2つ捨てられない」という会社もあります。その場合は、1枚に詰め込む代わりに、狙いごとにサイトやページを分ける道があります。信用のためのコーポレートサイトと、採用のための採用サイトを別に持つ。分ければ、それぞれのトップは1つの1歩に集中できます。1枚で3役を担わせるより、結果として全体が強くなります。
狙いを「数字」に置くと、かえって遠ざかる
絞るとき、経営者の少なからずが「問い合わせを月10件」といった数字をそのまま狙いに置こうとします。気持ちは分かりますが、これは遠回りになりがちです。数字はゴールそのものではありません。ゴールに近づけているかを映す結果だからです。
数字そのものを的にすると、サイトは数字を直接いじる方向に傾きます。とにかくアクセスを集める、ボタンを増やす、割引で釣る。短期的には件数が動くこともありますが、相談してきた相手とかみ合わず、受注につながらない問い合わせばかりが増えます。
考え方を1行にすると、こうなります。
「お金や件数は、仕事がうまくいっているかを映す結果であって、追いかける的にはしない」
| 狙いの置き方 | 現場で起きること | サイトがどう変わるか |
|---|---|---|
| 「問い合わせ◯件」を狙いにする | 件数を増やす小手先の工夫に走る | 数は動くが、かみ合わない相談が増える |
| 「アクセス数」を狙いにする | 読まれる話題を追い、事業と関係が薄くなる | 人は来るが、相談にはつながらない |
| 「訪問者の1歩」を狙いにする | 相手の不安を消すことに集中する | 件数は結果として、質を保ったまま増える |
| 「見た目の完成度」を狙いにする | 装飾に時間と費用が吸われる | きれいになるが、成果は変わらない |
狙いに置くのは、訪問者に起こしたい「1歩」です。「不安を減らして、相談ボタンを押してもらう」。この1歩に集中すると、数字はその結果として、質を保ったまま付いてきます。数字は毎月ながめる計器であって、ハンドルを握る手そのものにはしません。
アクセス数を追うと、事業から離れていく
アクセスを増やすこと自体を狙いにすると、話題選びが少しずつずれていきます。幅広い人に読まれる話は、たいてい自社の事業から遠い一般論です。読者は増えても、その大半は相談する相手ではありません。数字の見た目は良くなり、通信簿は上向きます。ところが、肝心の相談は動きません。計器の針だけが動いて、車は進んでいない状態です。
「見た目を良くする」を狙いにしない
デザインの美しさも、それ自体は狙いになりません。品質を測るものさしは無数にあり、どれも魅力的に見えます。全部を追うと、判断は疑いに満ち、一貫性を失います。美しさは、決めた1歩に効く範囲で追うものです。相談を増やすために読みやすくする、信用のために清潔に見せる。狙いが上にあって、はじめて装飾の要否が決まります。
ホームページ制作の目的 例|自社はどれを1つ選ぶか
抽象的な話が続いたので、選ぶための具体例を並べます。自社に近いものが1つあれば、それをそのまま出発点にしてください。ホームページ制作の目的は、この6つの例のどれかに、たいてい収まります。
| 狙いの例 | 向いているサイトの形 | 最初の1歩として置くもの |
|---|---|---|
| 会って話す前に信用してもらう | コーポレートサイト | 代表の考えと具体的な実績 |
| 相談や見積もりの入口にする | サービスサイト | 相談の流れと、料金の考え方 |
| 特定の商品を1つ売る | LP | 1つの申し込みボタン |
| ネットで直接買ってもらう | ECサイト | 買い方の分かりやすさと安心材料 |
| 応募を増やす | 採用サイト | 働く人の声と1日の流れ |
| 検索から相談を継続的に得る | コーポレートサイトと記事の組み合わせ | 読者の悩みに答える記事と相談導線 |
ここで大切なのは、6つのなかから1つだけを主役に選ぶことです。「サービスサイトも採用サイトも」と欲張った瞬間に、冒頭のぼやけたサイトへ逆戻りします。
同じ業種でも、選ぶ例は会社ごとに変わる
同じ建設業でも、元請けとの信用が命の会社は「信用してもらう」を選び、個人客からの相談で回る会社は「相談の入口」を選びます。業種で決まるものではありません。自社が今どこで困っているかで決まります。他社の立派なサイトを真似ると、他社の痛みに合わせた形をなぞることになり、自社の1歩から遠ざかります。
ホームページの目的の明確化|3つの問いで1つに決める
狙いを1つに絞る作業は、3つの問いで進みます。順番に答えていくと、抽象的な「集客」が、具体的な1歩まで降りてきます。ホームページの目的の明確化とは、この3つに自分の言葉で答えることだと考えてください。
| 問い | 考えること | 決まること |
|---|---|---|
| 誰に届けるのか | いちばん相談してほしい相手を1人に絞る | ターゲット |
| その人にどんな1歩を踏ませたいか | 相談、資料請求、来店のうち1つを選ぶ | サイトの狙い |
| そのために何を捨てるか | 1歩から遠い要素を後ろに回す | トップの構成 |
| いつ見直すか | 結果の数字を見る周期を決める | 運用のリズム |
問い1|誰に届けるのか
「幅広い層に」は、誰にも届かない状態と同じです。いちばん相談してほしい相手を1人だけ思い浮かべます。同業の担当者なのか、初めて頼む個人なのか。相手が1人に定まると、使う言葉も見せる実績も自然に決まります。1人に絞ると届く範囲が狭まるように感じますが、刺さる相手が増えるので、結果として反応は上がります。
問い2|どんな1歩を踏ませたいか
その相手に、サイトを見た直後に何をしてほしいか。電話、フォームからの相談、資料の請求、来店。この1歩が、あなたのサイトの狙いです。1歩を1つに決めると、トップにボタンをいくつも並べる必要が消えます。ボタンが1つになると、訪問者は迷わず、押される確率が上がります。
問い3|そのために何を捨てるか
1歩に効かない要素を、思い切って後ろへ動かします。長い会社沿革、受賞歴の羅列、凝ったトップの動き。無くしはしません。最前列から外すだけです。最前列は、決めた1歩のために空けておきます。捨てる勇気が、残したものの説得力を高めます。
狙いが決まると、トップページの見せ方はこう変わる
1つ決めた効果が、いちばん分かりやすく出るのがトップページです。同じ会社のサイトでも、選んだ1歩によって、最初に見せるものが入れ替わります。
| 選んだ狙い | トップで最初に見せるもの | 後ろに回すもの |
|---|---|---|
| 信用の獲得 | 具体的な実績と、取引の相手の顔ぶれ | キャンペーンや割引の告知 |
| 売上・申し込み | 相談の入口と、料金の考え方 | 詳しい会社沿革 |
| 人材の確保 | 働く人の言葉と、1日の流れ | 商品カタログの詳細 |
| 特定商品の販売 | その商品の1歩と、買った人の声 | 他の事業の紹介 |
どのパターンも、載せる情報の総量は大きく変わりません。順番と大きさだけが変わります。1本の背骨が通ると、同じ材料でも訪問者への伝わり方が変わります。
あいまいなサイトには、共通の症状が出る
狙いが絞れていないサイトには、見た目に共通の症状が出ます。自社に当てはまるものがあれば、原因は個々の要素ではありません。決めた1歩が無いことです。
| よくある症状 | 起きている原因 | 次にすること |
|---|---|---|
| トップにボタンが4つ以上ある | 踏ませたい1歩が決まっていない | いちばん重い1歩を1つ残す |
| キャッチコピーが会社の説明になっている | 訪問者を主語にできていない | 訪問者の悩みを主語にして書き直す |
| 写真は立派だが問い合わせが動かない | 見た目が狙いになっている | 不安を消す情報を先に足す |
| 更新するほど内容が増えて重くなる | 捨てる基準がない | 1歩から遠い順に後ろへ動かす |
| 社内でトップ案がまとまらない | 各部署の狙いが並立している | 今の痛みで主役を1つ選ぶ |
狙いが定まると、記事と検索対策の書き方も変わる
サイトに記事を足して検索から人を集めるとき、この1歩の有無で成果が大きく変わります。1歩が無い記事は、読まれても相談につながりません。書き手も「何のために書くのか」が曖昧なので、話題が事業から遠い一般論に流れます。
読まれる話より、相談につながる話を選ぶ
記事の話題は、読者数の見込みで選びません。決めた相手が検索しそうか、その人を1歩に近づけるかで選びます。読者数の多い話題は、たいてい相談する相手のいない話題です。1歩から逆算すると、地味でも相談に直結する話題が見えてきます。
誰も検索していない言葉では、1位でも人は来ない
検索対策で見落とされがちなのが、その言葉を実際に検索している人がいるかどうかです。順位が取れても、誰も打ち込んでいない言葉なら、ページは表示されません。狙いが「相談を増やす」と定まっていれば、相談前の人が打つ言葉を選べます。狙いは、話題選びの精度も上げてくれます。
自社の狙いを、一文で言えるか
ここまでの作業ができたかどうかは、簡単な形で確かめられます。自社サイトの狙いを、次の一文に当てはめて言えるかどうかです。「このサイトは、(誰)に、(どんな1歩)を踏ませるためにある」。この空欄が2つとも埋まり、しかも空欄がそれぞれ1つに定まっていれば、絞り込みは終わっています。
埋まらない、あるいは空欄に2つ以上入ってしまうなら、まだ絞れていません。その状態で制作や更新に進むと、冒頭のぼやけたサイトに戻ります。急がば回れで、この一文に戻ってください。
| よくある言い方 | 何が足りないか | 直した一文 |
|---|---|---|
| 会社のことを知ってもらうため | 相手も1歩も曖昧 | 紹介で名前を聞いた担当者に、実績を見て相談してもらうため |
| 集客のため | 1歩が数字に置き換わっている | 相談先を探す個人に、無料相談を申し込んでもらうため |
| いろいろな人に見てほしい | 相手が1人に絞れていない | 採用に迷う求職者に、働く人の声を読んで応募してもらうため |
| とりあえず今風にしたい | 狙いが見た目にすり替わっている | 初めて頼む個人に、料金の考え方を見て問い合わせてもらうため |
一文が言えると、他人にサイトを説明できる
この一文が固まると、社員にも制作会社にも、サイトの狙いを一息で説明できます。説明できるものは、共有できます。共有できるものは、担当が代わってもぶれません。逆に、一文で言えないサイトは、作った本人以外には狙いが伝わらず、更新のたびに少しずつ元の木阿弥になります。
迷ったら、相手の「困りごと」から一文を作る
一文が作りにくいときは、商品の側から始めず、相手の困りごとの側から始めます。あなたの相手は、どんな場面で、何に困って検索するのか。その困りごとを解く1歩を、サイトの狙いに据えます。困りごとから始めると、自社の言いたいことより、相手の知りたいことが前に出ます。これが、選ばれるサイトの最初の一歩です。
一文は、季節や事業の変化で見直してよい
一度決めた一文を、永久に変えてはいけないわけではありません。事業の重心が移れば、狙いも移ります。接点が増えて信用の課題が解けたら、次は売上へ。人手が足りなくなれば、採用へ。大切なのは、いつでも1つに絞れていることです。同時に2つを追い始めた瞬間に、また迷いが戻ります。見直すときも、置き換えるのは1つずつにします。
リニューアルの目的を「新しくすること」にしない
サイトのリニューアルで最も多い失敗が、「古くなったから新しくする」を狙いに置いてしまうことです。新しさは狙いになりません。新しくしても、1歩があいまいなままなら、ぼやけたサイトがきれいになるだけで、成果は変わりません。
| リニューアルの動機 | このままだと起きること | 狙いに直すと |
|---|---|---|
| デザインが古い | 見た目だけ新しくして成果は横ばい | 相談を増やすために読みやすくする |
| スマホで見にくい | 直すが、何を見せるかは未整理 | スマホで1歩を押しやすくする |
| 情報が増えすぎた | 整理の基準がなく、また増える | 1歩から遠い情報を後ろへ動かす |
| 競合が新しくした | 競合を真似て自社の軸を失う | 自社の1歩に合う形だけ取り入れる |
リニューアルこそ、狙いを1つに絞り直す好機です。作り直す前に、この記事の3つの問いに答えておくと、費用の使いどころが定まります。
作り直す前に、今のサイトの数字を控えておく
リニューアルの前に、今の相談件数や、よく見られているページを控えておきます。新しくしたあとで比べる基準が無いと、良くなったのか悪くなったのかが分かりません。狙いを1つに絞ったなら、その1歩の件数が上がったかだけを見ます。見る数字が1つに定まっていると、リニューアルの成否をはっきり判定できます。
目的とホームページの費用対効果
ホームページの費用対効果が悪いと感じるとき、その正体は、決めた1歩の不在であることがほとんどです。狙いのないサイトは、あらゆる要素に少しずつ投資し、どれも成果まで届きません。投じた労力が、成果の1点に集まらないからです。
狙いが1つに定まると、投資の判断も1つの問いに変わります。「この出費は、決めた1歩を増やすか」。答えが出れば、凝った動きや過剰な装飾に費用が流れるのを止められます。費用対効果は、使う金額を減らして上げるものではありません。決めた一点へ費用を集めることで上がります。
成果は、公開してすぐには出ない
狙いを絞っても、翌週に問い合わせが倍になるわけではありません。信用が積み上がり、検索から見つけられ、相談に至るまでには時間がかかります。1歩を保ったまま、月ごとに数字をながめ、少しずつ直す。この静かな継続が、遠回りに見えて最短の道です。
小さな会社ほど、狙いを1つに絞る効果が大きい
使える人手も費用も限られている会社ほど、狙いを1つに絞る効果は大きくなります。大企業は、複数の狙いに人と予算を分けて追えます。小さな会社が同じ真似をすると、どれも中途半端になります。限られた力を1点に集めることが、小さな会社の最大の武器です。
担当が1人でも回る仕組みになる
サイト担当が専任のところは少なく、他の仕事と兼ねている会社は珍しくありません。狙いが1つに決まっていると、兼任の担当者でも判断に迷いません。「この追加は決めた1歩に効くか」を自分で答えられるからです。狙いは、少人数でサイトを回すための、いちばん安上がりな仕組みでもあります。
狙いが社内でぶれないための一枚
せっかく絞った狙いも、担当者が代わると元に戻ります。防ぐには、決めたことを1枚に書き残します。難しい様式は要りません。次の3行で十分です。
このサイトの狙いは、誰に、どんな1歩を踏ませることか。そのために、何を最前列に置き、何を後ろへ回したか。うまくいっているかを、どの数字で、いつ確かめるか。
この1枚があると、新しい提案が来たときの判断が速くなります。「その追加は、決めた1歩に効きますか」。この問いに答えられない追加は、いったん保留にできます。狙いの1枚は、断るための道具にもなります。
よくある質問
Q. 狙いを1つに絞ると、他の成果は諦めることになりませんか
A. 諦めることにはなりません。絞るのは、トップページの最前列という限られた場所です。主役の1歩を決めたうえで、他の狙いは下の階層や別ページで受け止めます。1つに集中したサイトのほうが、結果として複数の成果につながることも多くあります。
Q. 目的と目標は、どちらを先に決めますか
A. 目的が先です。「訪問者に相談してもらう」という1歩を決めてから、「相談を月に何件」という目標の数字を置きます。数字から決めると、数字を直接いじる方向にサイトが傾き、かみ合わない問い合わせが増えます。
Q. 狙いが決まりません。どこから手をつければいいですか
A. 今いちばん困っていることから決めます。受注が弱いなら信用、接点が少ないなら売上、人が足りないなら人材です。3つを均等に狙おうとすると決まりません。血がいちばん出ている場所を1つ選んでください。
Q. すでにあるサイトでも、狙いは絞り直せますか
A. 絞り直せます。作り直す必要はありません。トップページの要素を、決めた1歩に近い順に並べ替え、遠いものを後ろへ動かすだけでも、伝わり方は変わります。小さく直して、数字の変化を見てください。
Q. 狙いを決めても、社内で意見が割れます
A. 各部署がそれぞれの狙いを正しく持っているからこそ割れます。優劣で決めません。今の会社の痛みで主役を1つ選ぶ、と基準を先に合わせてください。決めた1歩は1枚に書き残し、次の提案はその1枚に照らして判断します。
まとめ
ホームページの目的は、複数から優先度を付けるものではありません。1つに絞り込むものです。1つに絞ると、「この要素は決めた1歩に効くか」という1つの問いで、サイトのあらゆる判断が片付きます。
狙いに置くのは、訪問者に起こしたい1歩です。問い合わせの件数や売上といった数字は、その結果として付いてくる計器であって、追いかける的にはしません。お金や件数は、仕事がうまくいっているかを映す結果です。この順番を守るだけで、装飾や小手先に費用が流れるのを止められます。
今いちばん困っている痛みから、狙いの型を1つ選ぶ。3つの問いで、誰に、どんな1歩を、何を捨てて届けるかを決める。決めたことを1枚に書き残す。ここまでできれば、あなたのサイトには背骨が1本通ります。
背骨が通ったサイトは、直す場所に迷いません。新しい提案が来ても、決めた1歩に照らして、残すか後ろへ回すかを即座に判断できます。サイトの強さは、載せた情報の量で決まりません。狙いの絞り込みの深さで決まります。今日、この記事を閉じたあとに、自社サイトの狙いを一文で書いてみてください。書けたなら、あなたはもう、迷わず直しはじめられます。
今日できる点検
最後に、今日そのまま自社サイトで試せる点検を置きます。トップページを開いて、上から順に見てください。
| 点検する場所 | 見るポイント | 直す方向 |
|---|---|---|
| トップのボタン | 押させたい1歩が1つに絞れているか | いちばん重い1歩を残し、他は後ろへ |
| キャッチコピー | 主語が訪問者になっているか | 相手の悩みを主語にして書き直す |
| 最前列の情報 | 決めた1歩に近いものが上にあるか | 遠いものを下の階層へ動かす |
| 数字の扱い | 狙いそのものと取り違えず結果として見ているか | 月に1度ながめる計器に位置づける |
| 狙いの一枚 | 誰にどんな1歩かが書き残されているか | 3行で書き、社内で共有する |
5つのうち1つでも「直す方向」に動かせれば、今日のうちに、あなたのサイトの狙いは昨日より1つ明確になります。
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