「ホームページも作った、Googleビジネスプロフィールも登録した、SNSも始めた。それでも相談の電話が鳴らない」
士業の先生から、この相談を受ける回数が増えています。話を聞くと、やっていないことはほとんどありません。むしろ、やりすぎているケースのほうが多い。
この記事では、士業のWeb集客を「何を減らすか」から考え直します。足す話は一度脇に置きます。手法を10個並べる話はしません。すでに十分な数を抱えている先生ほど、読んで意味のある内容になっているはずです。
【結論】手法の数と、相談の数は比例しない
先に要点をまとめます。
1つ目。士業のWeb集客を扱う情報の多くが「手法10選」の形をとっています。SEO、リスティング広告、Googleビジネスプロフィール、SNS、ポータルサイト、動画、メールマガジン、ウェビナー。並べれば10個は簡単に出ます。ただ、これを1人か2人の事務所で回せるかは別の話です。
2つ目。相談が来ない原因は、入口の数の不足より、サイトに情報が多すぎることにあります。700人を対象とした調査では、回答者の60%が士業への相談をためらうと答えており、その理由の1位は「費用が高そうだから」で62.8%でした。判断材料が渡せていないと、何個入口を作っても同じ場所で止まります。
3つ目。士業のサイトには、載せるべきだと思われているのに実際は読まれていない情報が多くあります。資格の一覧、経歴、事務所の沿革、理念。これらは依頼先を最終決定する直前まで読まれません。
4つ目。減らしたうえで、残った1本の導線に集中させる。この順序で組み直すと、同じアクセス数でも相談の数が変わります。手法を増やすのは、そのあとです。
競争は、数字の上で確実に厳しくなっている
打ち手の話に入る前に、環境を確かめます。感覚で語られがちな部分ですが、登録者数で見ると状況ははっきりします。
供給する側だけが増え続けている
| 年度 | 弁護士 | 税理士 | 行政書士 | 社労士 |
|---|---|---|---|---|
| 2016 | — | 76,493人 | 45,441人 | 40,535人 |
| 2020 | 42,164人 | 79,404人 | 48,639人 | 43,474人 |
| 2025 | 47,103人 | 82,114人 | 54,261人 | 47,923人 |
各連合会の公式統計です。弁護士は2000年の17,126人から2025年の47,103人へ、25年で約2.7倍になりました。税理士も昭和35年の約1万人から8万人超へ拡大しています。
一方で、日本の人口と企業数は減少しています。需要が縮み、供給が増える。1事務所あたりが獲得できる潜在顧客の数は、物理的に減り続けています。
しかも、都市部に偏っている
登録者は全国に均等にいるわけではありません。弁護士は半数以上が東京に集中し、地方には100名に満たない県があります。社労士は東京だけで11,335人と全国の25%を超える一方、鳥取県は133人です。税理士は東京会が全体の約3割にあたる約2.4万人を占めます。
この偏りは、商圏によって取るべき戦略が変わることを意味します。都市部では競合過多でリスティング広告のクリック単価が高騰し、資本力のない事務所から順に脱落します。地方では競合が少ない代わりに検索される数自体が小さいため、狙う語の設計が成否を分けます。
8割近くが1〜2名の事務所である
もう1つ、打ち手を考えるうえで外せない数字があります。事務所の規模です。
日本弁護士連合会の調査によれば、1人事務所が60.43%、2人事務所が17.94%で、合わせて78.37%が1〜2名規模です。社労士は1〜4名規模が全体の80%、税理士は62.1〜63%とされています。平均職員数は行政書士1.95人、司法書士2.93人、社労士3.19人です。
つまり業界の圧倒的多数が、所長自身が実務をこなしながらマーケティングも兼務する体制です。専任の担当者を置ける事務所はごく僅かです。
この前提を踏まえずに手法を10個並べても、実行できません。次の章で、その点を具体的に見ます。
「士業のWeb集客は難しい」の中身を分解する
士業のWeb集客が難しいとされる理由は、だいたい同じ4つが挙げられます。ただ、この4つは性質が違います。分けて見ないと打ち手を間違えます。
| よく挙げられる理由 | 実際に効いているか | 打ち手の方向 |
|---|---|---|
| 法的制約で差別化しにくい | 広告表現の制約はあるが、書ける範囲は広い | 実績の数より、扱った案件の型を具体的に書く |
| 相談者の比較意識が高い | 効いている。ただし比較されるのは料金だけではない | 相談前に不安に思うことを、先回りして書く |
| 緊急性が低い案件も多い | 案件による。相続や労務トラブルは緊急性が高い | 緊急度の高い分野と低い分野で導線を分ける |
| 地域性が強く競争が激しい | 効いている。ただし商圏によって差が大きい | 地域名だけを狙わず、分野との掛け合わせで絞る |
この4つのうち、Webサイトの構造で解決できるのは2番目です。相談者が比較しているのは料金だけではありません。「この先生に話して大丈夫か」という点も見ています。ここに答えられているサイトは多くありません。
相談者は、依頼を決める前に不安を潰したい
士業への相談は、多くの人にとって初めての経験です。弁護士に会ったことがない、税理士と話したことがない。そういう相談者が最初に確かめたいのは、専門性の高さではありません。
いくらかかるのか。何を持っていけばよいのか。相談だけで終わっても怒られないか。今の段階で相談していい話なのか。これらが分からないと、問い合わせのボタンは押されません。
ところが多くの士業サイトは、この4つに答える前に、資格と経歴と理念を並べています。相談者が知りたい順番と、サイトが答えている順番がずれています。
手法10選が機能しない理由
士業のWeb集客を扱う記事は、ほぼ例外なく手法を並べる形をとっています。実際に並べてみると、何が起きるかが見えます。
| 手法 | 継続に必要な作業 | 1〜2名の事務所で回せるか |
|---|---|---|
| ホームページ運用 | 記事の追加、情報の更新 | 月2〜3本なら可能 |
| SEO対策 | キーワード調査、記事の設計と改善 | 知識と時間の両方が要る |
| リスティング広告 | 入札調整、文言の検証、予算管理 | 予算があれば外部委託が現実的 |
| Googleビジネスプロフィール | 投稿、口コミ返信、情報更新 | 可能。負荷は比較的軽い |
| SNS運用 | 投稿の企画と作成、反応への対応 | 毎日の作業になり、続かないことが多い |
| ポータルサイト | 掲載情報の更新、掲載料の管理 | 可能だが、他の事務所と並べて比較される |
| 動画 | 企画、撮影、編集、公開 | 1本あたりの負荷が大きい |
| メールマガジン | 読者集め、配信内容の作成 | 読者がいない状態では効果が出ない |
| ウェビナー | 集客、資料作成、当日の運営 | 単発なら可能。継続は難しい |
右の列を見てください。1〜2名の事務所で無理なく続けられるのは、多くて3つです。それ以上に手を広げると、どれも中途半端になります。
手を広げるほど、判断材料が散らばる
問題は負荷だけではありません。入口を増やすと、相談者から見た情報が散らばります。
サイトには料金表があり、SNSには実績の投稿があり、ポータルサイトには別の紹介文が載っている。どれが最新で、どれが正しいのか。相談者はそこまで追いません。ひとつ見て判断がつかなければ、次の事務所へ移ります。
入口を増やすことに意味があるのは、着地点が整理されている場合だけです。散らかった部屋の入口を増やしても、片づいて見えることはありません。
士業サイトで、実際には読まれていない情報
ここから具体的な話に入ります。サイトに載っている情報を、相談者が読む段階で並べ直します。
| 載せている情報 | 相談者が読む段階 | 置くべき場所 |
|---|---|---|
| 扱う分野と、対応できる地域 | 最初の5秒 | トップページの最上部 |
| 料金の目安と、変動する条件 | 相談を検討し始めた時点 | トップから1クリック以内 |
| 相談の流れと、持ち物 | 問い合わせを迷っている時点 | 問い合わせフォームの直前 |
| 解決した案件の型 | 自分の状況と重なるか確かめる時点 | 分野ごとに整理して常時 |
| 資格・経歴・所属 | 依頼先を最終決定する直前 | プロフィールのページへ分離 |
| 事務所の理念・沿革 | ほとんど読まれない | 会社案内へ移す |
| 法改正のお知らせ | 既存の顧問先が見る | お知らせ欄にまとめる |
上の3つと下の3つが逆になっているサイトが多くあります。トップページを開いた瞬間に、資格の一覧と代表の挨拶が出てくる構成です。
なぜ経歴を先に出してしまうのか
これは士業の先生が悪いわけではありません。試験に合格し、実務を積み、資格を得るまでに相当の年数がかかっています。それを先に伝えたくなるのは自然なことです。
ただ、相談者はその価値を測れません。合格率も、実務経験の長さも、比較する基準を持っていないためです。基準を持たない人に基準の話をしても、判断材料になりません。
相談者が測れるのは、自分の状況に近い話かどうかだけです。「相続で兄弟と揉めている」という人には、相続の実績件数より「兄弟間で意見が割れた場合にどう進めるか」のほうが判断材料になります。
引き算の手順
では実際に何をするか。4つの手順に分けます。1〜3は自分でできます。
| 手順 | やること | 判断の基準 |
|---|---|---|
| 1 | トップページを5秒だけ見て、何の事務所か言えるか確かめる | 扱う分野と地域が言えなければ書き直す |
| 2 | ページごとに、誰がいつ読むかを書き出す | 読む段階が答えられないページは統合か削除 |
| 3 | 問い合わせまでのクリック数を数える | 3回を超えるなら経路を短くする |
| 4 | 残った導線を1本に決める | 1ページにつき進む先は1つだけにする |
手順1:5秒で何の事務所か伝わるか
自分のサイトを、初めて見る人の目で5秒だけ見てください。難しければ、事務所と関係のない人に見てもらうのが確実です。
確かめるのは1点だけです。「どこで、誰の、どんな問題を扱う事務所か」が言えるかどうか。言えなければ、最上部の文言を書き直します。
ここで「地域密着で親身に対応します」といった表現を使わないでください。どの事務所も同じことを書いており、判断材料になりません。「◯◯市で、相続の手続きと、揉めたあとの調整を扱う」のように、具体的に書きます。
手順2:ページごとに、読む人と読む段階を書き出す
サイト内のページを一覧にして、それぞれ「誰が」「検討のどの段階で」読むかを書き出します。書けないページが必ず出てきます。
書けないページは、載せたい情報があって作られたページです。相談者の側に読む理由がありません。統合するか、下層へ移します。
この作業で、ページ数が半分近くになることがあります。減らして困ることはまずありません。
手順3:問い合わせまでのクリック数を数える
トップページから問い合わせフォームの送信までに、何回クリックが必要かを数えます。3回を超えているなら、途中で離れる人が出ています。
士業サイトでよくあるのは、分野ページ→料金ページ→事務所案内→問い合わせという流れです。相談者は料金を見た時点で問い合わせたいのに、そこに入口がありません。
読んでいる途中で決心がついた瞬間に、進める場所を置いておく。これだけで数字が変わります。
手順4:導線を1本に決める
最後に、進む先を1つに絞ります。ここが最も難しく、最も効きます。
士業サイトには、電話、メールフォーム、LINE、予約システム、資料請求が同時に並んでいることがあります。選択肢を増やせば選ばれやすいと考えがちですが、実際には逆です。どれを使えばよいか判断できず、決めるのを先送りにします。
1ページにつき、進む先は1つ。分野ページなら「この分野の相談をする」、料金ページなら「見積もりを依頼する」。用途を分けて、それぞれ1本にします。
同じアクセス数で、結果が何倍も変わる
引き算に効果があるのかを、数字の構造で説明します。
サイトに来た人のうち何%が問い合わせに至るかを、コンバージョン率と呼びます。士業分野の目安は3.0%〜8.0%程度とされていますが、実際にはこれを大きく下回るサイトが多くあります。
Webマーケティング会社が公開している支援実績に、次のような例があります。税理士の顧問税務を扱うサイトで、コンバージョン率が0.51%だったものが、ランディングページの改修後に3.12%へ変わりました。同じ広告費、同じアクセス数で、問い合わせが6倍です。
| 領域 | コンバージョン率の目安・実績 |
|---|---|
| BtoB領域全般 | 0.5〜1.5% |
| 士業分野一般 | 3.0〜8.0% |
| 税理士(顧問税務) | 改善前0.51% → 改修後3.12% |
| 税理士(相続税申告) | 7.11%(最適化された事例) |
記事を1本も増やさずに、この差が生まれています。変わったのはサイトの側だけです。
| 月間の目標相談数 | CVR 0.5%の場合 | CVR 1.0%の場合 | CVR 2.0%の場合 |
|---|---|---|---|
| 3件 | 600セッション | 300セッション | 150セッション |
| 5件 | 1,000セッション | 500セッション | 250セッション |
| 10件 | 2,000セッション | 1,000セッション | 500セッション |
上の表は計算例です。実際のCVRは分野や地域によって変わるため、自社の数値はアクセス解析で確かめてください。
重要なのは構造のほうです。CVRを2倍にすれば、必要なアクセス数は半分になります。逆に言えば、CVRを放置したまま手法を増やすと、増やした分だけ無駄が出ます。
そして、CVRの改善は既存のアクセスすべてに効きます。記事の追加はその記事に来た人にしか効きません。どちらに先に手を付けるかを選べるなら、答えははっきりしています。
受け皿を放置したまま広告を出すと、1件30万円になる
士業分野のリスティング広告は、クリック単価が高い領域です。運用実績に基づく目安は次のとおりです。
| キーワード例 | クリック単価の目安 |
|---|---|
| 弁護士 債務整理 | 2,000〜4,000円 |
| 弁護士 離婚 | 2,000〜3,500円 |
| 弁護士 交通事故 | 1,500〜3,000円 |
| 弁護士 ◯◯市 | 500〜1,500円 |
| 税理士 顧問 ◯◯市 | 400〜1,200円 |
| 相続税申告 税理士 ◯◯市 | 200〜600円 |
1件の問い合わせを獲得する費用は、クリック単価をコンバージョン率で割って求めます。「弁護士 債務整理」でクリック単価が3,000円、サイトのコンバージョン率が1%だとすると、1件あたり30万円です。
ここから受任に至る割合を考えれば、この単価は1〜2名規模の事務所の経営体力を容易に奪います。逆にコンバージョン率が3%あれば、同じ条件で10万円です。
広告を検討する前に受け皿を整えるべき理由は、ここにあります。クリック単価は自分では下げられませんが、コンバージョン率は自分で上げられます。
資格ごとに、削る場所が違う
引き算の考え方は共通ですが、削る対象は資格によって変わります。相談者の状態が違うためです。
| 資格 | 相談者の状態 | 先に出すべきもの | 後ろへ回してよいもの |
|---|---|---|---|
| 弁護士 | すでに困っており、急いでいる | 扱う分野と、今すぐ相談できるか | 所属・経歴・過去の受賞 |
| 税理士 | 時期が決まっている。比較検討の時間がある | 顧問料の目安と、含まれる範囲 | 事務所の沿革・スタッフ紹介 |
| 司法書士 | 手続きの必要は分かるが、何から始めるか不明 | 手続きの流れと、必要な書類 | 資格の説明・業務範囲の法的定義 |
| 行政書士 | 期限が決まっている手続きが多い | 対応できる手続きの一覧と、所要期間 | 理念・代表挨拶 |
| 社会保険労務士 | トラブル対応と、平常時の顧問で分かれる | 緊急対応か顧問か、入口を分けて示す | 助成金の一般的な解説 |
共通しているのは、「先に出すべきもの」がすべて相談者側の事情に属する点です。事務所側の事情に属するものは、後ろへ回して構いません。
記事は何本必要か
サイトを整理したうえで、次に記事を積みます。ここでも本数を欲張らないほうが結果が出ます。
狙うのは、相談前に検索される具体的な疑問
「地域名+士業名」は誰もが最初に思いつく語ですが、その商圏で最も競争が激しい場所でもあります。1〜2名の事務所が正面から取りに行く語ではありません。
狙うのは、相談を決める手前で検索される具体的な疑問です。「相続 兄弟 揉める 相談先」「就業規則 変更 従業員 反対」「会社設立 費用 自分でやる」といった語です。
| 検索の段階 | 調べられること | 事務所だから書けること |
|---|---|---|
| 問題が起きた直後 | これは誰に相談する話なのか | 資格の線引きと、自分が扱える範囲 |
| 自分で処理できるか探る | 手続きの方法、必要書類 | 自分でやった場合に詰まりやすい箇所 |
| 費用を確かめる | 相場、追加費用の有無 | 自社の料金の構成と、変動する条件 |
| 依頼先を比べる | 選び方、失敗しない基準 | 断ることがある案件と、その理由 |
右の列は、外部のライターには書けません。事務所の中にしかない情報です。逆に言えば、一般論だけで書ける記事は、すでに誰かが書いています。
月2本から始める
検索から集客できる水準に到達するには、質の高い記事が最低50本、理想的には100本以上必要とされています。この数字を見て月8本を目指すと、多くの場合2〜3か月で止まります。
月2本なら年間24本、3年で70本を超えます。遅く感じられるかもしれませんが、止まってしまえばゼロです。続けられる本数で始めてください。
どの分野に力を入れるかで、結果が変わる
整理と記事の話をしてきましたが、そもそもどの分野を前面に出すかでも成果は変わります。分野ごとに需要の方向が違うためです。
定型業務のパイは縮んでいる
不動産登記の件数は、2005年の約1,020万件から2014年には約880万件へ減少し、その後は大きな変動なく横ばいが続いています。家事事件は増加傾向にあるものの、弁護士人口の急増を吸収できるほどの伸びとは評価されていません。
加えて、AIとクラウド会計の普及により、記帳代行や定型的な申告書の作成といった労働集約型の業務は自動化が進むと予測されています。この領域で価格競争に入ると、下がり続ける単価を追いかけることになります。
需要が動いている領域がある
| 分野 | 需要の方向 | Web上での扱い方 |
|---|---|---|
| 相続登記 | 2024年4月の義務化で潜在需要が掘り起こされた | 期限と罰則を軸に、放置した場合の話まで書く |
| 記帳代行・定型申告 | 自動化により縮小が見込まれる | 前面に出さない。付随業務として扱う |
| 税務調査の立ち会い | AIで代替できない。需要は増大とされる | 実際の進み方を、経験に基づいて書く |
| 事業承継・M&A支援 | 同上 | 判断が分かれる論点への見解を示す |
| 複雑な税務相談 | 同上 | 典型的な誤解と、その正し方を書く |
共通しているのは、AIで代替できない領域ほど需要が残るという点です。そしてそれは、Web上で書くべき内容とも一致します。
AIの出力を検証する役割が生まれている
法律や税務の分野で、生成AIの回答の正確性を定量的に検証した査読論文や公的調査は、現時点で見当たりません。ただ、実務家が生成AIの法律相談の出力を3段階で正誤判定するスクリーニングサービスが商用化されている事実があります。
AIが出した答えが正しいかどうかを判断し、法的な責任をもって裏づける。この役割は資格者にしか担えません。相談者がAIに聞いてから来ることが前提になりつつある以上、その前提に合わせた発信のほうが届きます。
AI検索が、士業の集客に与えている影響
2026年に入って起きている変化に触れておきます。士業向けの情報でほとんど語られていない論点です。
Google検索の上部にAIが回答を表示する機能が広がっています。士業に関わるキーワードでの表示率は、次のように分かれます。
| キーワードの性質 | 例 | AI回答の表示率 |
|---|---|---|
| 定義系 | 相続税とは、成年後見制度とは | 70%超 |
| 手続き解説系 | 会社設立 手続き、確定申告 期限 | 70%超 |
| 士業関連キーワード全体 | — | 約40% |
| 相談意図・比較系 | 遺言書作成 弁護士に頼むべきか | 低い |
定義系と手続き解説系は70%を超えています。「遺留分とは」「就業規則の作り方」「会社設立の手順」といった記事は、まさにこの型です。上位を取っても、検索結果の画面上で用が済んでしまいます。
一方、相談意図や比較を含む語では表示率が低くなります。個別の状況に対する専門家の判断を求める問いに、AIは答えきれないためです。「私のこの状況では、いくらかかって、どう進むのか」という問いがそれにあたります。
基礎知識の解説でアクセスを集める手法は、ここ数年で無効化しつつあります。狙うべき場所が明確に移りました。
| 記事の型 | AI検索での扱われ方 | これから書くなら |
|---|---|---|
| 用語解説(「◯◯とは」) | AIが要約して答える。クリックされにくい | 単独では書かない。判断の材料として組み込む |
| 手続きの一般的な流れ | 同上 | 自分でやった場合に詰まる箇所まで書く |
| 実際に扱った案件の型 | AIが持っていない情報。引用されやすい | 個人が特定されない形で具体的に書く |
| 判断が分かれる論点の見解 | 同上 | 根拠と、自分の立場を明示して書く |
読む人は減り、読んだ人の本気度は上がっています。少ない本数で結果を出すなら、AIが答えられない領域から書くほうが確実です。
よくある質問
Q. 情報を減らすと、専門性が伝わらなくなりませんか
減らすのは、相談者が読む段階に合っていない情報です。資格や経歴は消しません。読まれる場所へ移すだけです。専門性は、扱った案件の型を具体的に書くほうが伝わります。資格の一覧より、「この状況をどう処理したか」のほうが判断材料になるためです。
Q. SNSはやめたほうがよいですか
続けられているならやめる必要はありません。問題は、続かないものを抱え込むことです。3か月更新が止まっているアカウントは、活動していない事務所という印象を与えます。手を広げる前に、いま抱えているもののうち止まっているものを整理してください。
Q. 広告を出せば早いのでは
早く反応が出るのは事実です。ただ、広告で連れてきた人も同じサイトに着地します。CVRが低いままだと、費用をかけた分だけ無駄が大きくなります。広告を検討するなら、着地するページを整えてからのほうが費用対効果が上がります。
Q. 何か月で効果が出ますか
サイトの整理は、着手した月から数字に出ることがあります。既存のアクセスに対して効くためです。一方、記事による検索流入は一般に1年以上かかります。順序としてサイトの整理を先に置くのは、この差があるためでもあります。
まとめ
士業のWeb集客について、要点を整理します。
手法を10個並べる情報は多くありますが、1〜2名の事務所で続けられるのは3つ程度です。抱え込むほど、どれも中途半端になり、相談者から見た情報も散らばります。
相談が来ない原因の多くは、入口の不足より、サイトに情報が多すぎることにあります。資格・経歴・理念は、依頼先を最終決定する直前まで読まれません。相談者が最初に知りたいのは、扱う分野と地域、料金の目安、相談の流れです。この順番が逆になっているサイトが多くあります。
やることは4つです。5秒で何の事務所か伝わるか確かめる。ページごとに読む人と段階を書き出す。問い合わせまでのクリック数を数える。残った導線を1本に決める。1から3までは自分でできます。
この整理をしたうえで記事を積むと、同じ本数でも相談の数が変わります。順序を逆にすると、増やした分だけ無駄が出ます。
自社のサイトがどの状態にあるかを確かめたい場合は、トップページに無料の診断と解説動画を用意しています。売れるサイトの構造と、そこへ至る手順をまとめたものです。何から手を付けるかを決める材料になります。
なお、本記事に記載したコンバージョン率の表は計算例です。実際の数値は分野や地域によって変わるため、自社のアクセス解析で確かめてください。AI検索に関する数値は2026年8月時点の調査に基づくものです。
相談前の4つの不安に、先回りして答える
サイトを整理したあと、空いた場所に何を置くか。相談者が問い合わせを迷う理由は、だいたい4つに集約されます。ここに答えるだけで、同じアクセス数でも反応が変わります。
| 相談前の不安 | 答えがないと起きること | サイトに置く内容 |
|---|---|---|
| いくらかかるのか | 問い合わせずに他事務所と比べて離れる | 料金の下限と上限、変動する条件 |
| 相談だけで終わってよいか | 依頼を迫られる不安から問い合わせを避ける | 相談のみで終えて構わないことを明記 |
| 自分の状況で相談していい話か | 対象か判断できず様子見になる | 扱う案件と、扱わない案件を並べて示す |
| 何を用意すればよいか | 準備が面倒に思えて先送りになる | 初回相談の持ち物と、なくても進む旨 |
料金は、幅と条件をセットで書く
士業の料金は案件によって変わるため、明示を避けたくなる気持ちは分かります。ただ、書かない選択をすると、相談者は「聞かないと分からない=高いのかもしれない」と受け取ります。
書き方は決まっています。下限と上限、そして何で変動するかの3点をセットにします。「◯万円〜◯万円。相続人の数と、不動産の有無で変わります」と書けば、相談者は自分がどのあたりかを想像できます。
加えて、追加費用が発生する条件を先に書いてください。後から出てくる費用は、金額の大小にかかわらず信頼を損ないます。
扱わない案件を書くと、信頼が上がる
多くの士業サイトは、対応できる範囲を広く書きます。取りこぼしたくないためです。ただ、これは逆効果になることがあります。
何でもできると書いてある事務所と、「この分野は扱わない」と明記している事務所を並べたとき、相談者が専門性を感じるのは後者です。断る基準を持っている人のほうが、判断できる人に見えます。
実務上も、対象外の相談が減れば対応の負荷が下がります。書かない理由がありません。
相談の流れは、時系列で並べる
初めて士業に相談する人は、何が起きるか分かりません。電話をかけたら何を聞かれるのか、その場で契約させられるのか、断れるのか。
問い合わせから解決までの流れを、時系列で書いてください。各段階でかかる期間と、費用が発生する時点を添えます。この1ページがあるだけで、問い合わせのハードルが下がります。
キーワードは「地域名×分野」より一段細かく取る
記事を書く段になると、キーワードの選び方で迷います。ここでも欲張らないほうが結果が出ます。
地域名だけでは、勝てる相手が限られる
「地域名+士業名」は、その商圏で最も競争が激しい語です。長年運営しているサイトやポータルサイトが上位を占めており、開設して間もないサイトが正面から取りに行く場所ではありません。
一段細かく取ります。「地域名+分野」、さらに「地域名+分野+状況」まで絞ると、競合が薄くなります。検索する人数は減りますが、その語を打つ人は相談に近い段階にいます。
| キーワードの粒度 | 例 | 打つ人の状態 | 取りに行くべきか |
|---|---|---|---|
| 士業名のみ | 税理士 | 調べ始めたばかり。地域も決まっていない | 狙わない |
| 地域名+士業名 | ◯◯市 税理士 | 依頼先を探している。競争が最も激しい | 後回しにする |
| 地域名+分野 | ◯◯市 相続 税理士 | 分野が決まっている。競合が減る | 優先度が高い |
| 地域名+分野+状況 | ◯◯市 相続 不動産 分割 揉めた | 具体的に困っている。相談に最も近い | 最優先 |
1〜2名の事務所が月2本のペースで書くなら、下の2つから始めるのが現実的です。上の2つは、下が積み上がってから届くようになります。
記事の題材は、断った相談から出る
何を書けばよいか分からないという相談をよく受けます。題材は事務所の中にあります。
1つ目は、初回相談で毎回説明していることです。同じ説明を繰り返しているなら、それは多くの人が知らない情報です。記事にすれば、説明の時間が減ります。
2つ目は、断った相談です。なぜ扱えなかったのか、どこへ相談すべきだったのか。これを書ける事務所は多くありません。
3つ目は、相談者が誤解していたことです。「こういう手続きだと思っていた」という思い込みは、同じ状況の人が同じように持っています。
この3つを記録するだけで、月2本のペースなら1年分の題材になります。特別な取材は要りません。
整理を続ける仕組み
一度整理しても、放っておくとまた増えます。情報を足したくなるのは自然な力なので、減らす側にも仕組みが要ります。
| 増えやすいもの | 放置したときの状態 | 抑える方法 |
|---|---|---|
| お知らせ・法改正の投稿 | トップが古い告知で埋まる | 掲載期間を決め、過ぎたら下げる |
| 対応分野の追加 | 何が専門か分からなくなる | 追加するとき、1つ下層へ移す |
| バナー・キャンペーン | 本文より目立ち、視線が散る | 同時に置くのは1つまでとする |
| 問い合わせの入口 | 選べずに決断が先送りになる | ページごとに1本だけ残す |
半年に一度、手順1から3をもう一度なぞる時間を取ってください。1時間で終わります。この点検を続けている事務所とそうでない事務所では、2年後のサイトの状態がまったく違います。
担当は個人に紐づけず、役割で置く
サイトの更新を特定の職員が担っている場合、その人が辞めた時点で止まります。士業事務所の規模では起こりやすい話です。
誰が何をいつやるかを、役割として書き出しておいてください。記事を書く人、確認する人、公開する人。1人が兼ねていても構いませんが、明文化しておけば引き継ぎができます。
外部に任せる場合、どこまで出せるか
時間が確保できない場合、外部への委託を検討することになります。ただ、工程のすべてが外に出るわけではありません。
| 工程 | 主に担うのは | 事務所に残る理由 |
|---|---|---|
| キーワードと構成の決定 | 外注先が作成し、事務所が確認 | 何を書くかは事務所の方針そのもの |
| 情報提供・取材対応 | 事務所 | 断った相談や誤解の例は社外から取得できない |
| 執筆 | 外注先 | 外注で最も軽くなる工程 |
| 内容の確認 | 事務所 | 法的な正確さを判断できるのは有資格者だけ |
| 公開作業 | 契約範囲による | 見積もり時に確認する |
士業の場合、内容の確認を外に出せない点が他業種と違います。法令の解釈や、事務所としての見解に関わる部分は、有資格者が目を通す必要があります。この工程を見込まずに本数を決めると、原稿が滞留します。
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