「読者目線で書きましょう」という言葉は、ウェブサイトの文章について語られるとき、ほぼ必ず出てきます。ただ、この言葉だけを受け取っても、明日から具体的に何を変えればよいのかは分かりません。
この記事では、読者目線という曖昧な言葉を、机の前で実行できる作業の形にほどきます。あわせて、Googleが公式に公開している判断基準も確認します。検索エンジンに評価される書き方と、読む人に伝わる書き方は、実のところ同じ方向を向いています。
「読者目線」が曖昧なまま使われている
読者目線という言葉が扱いにくいのは、それが心構えの話として語られがちだからです。心構えは点検できません。書き終えた原稿を前にして「読者目線になっているか」と自問しても、たいていは「なっている気がする」で終わります。
そこで、この記事では読者目線を次のように定義します。読む人がその瞬間に抱えている問いに、その場で答えている状態。この定義なら点検できます。見出しごとに問いを立て、その直下で答えているかどうかを目で追えばよいからです。
Googleが公式に示している判断基準
Googleは検索セントラルの公式ドキュメント「有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成」の中で、自分のコンテンツを点検するための問いを公開しています。Google自身が書いている内容なので、推測を挟む余地がありません。
| 観点 | Googleが挙げている問い |
|---|---|
| 独自性 | 独自の情報、報告、調査、分析を提供しているか |
| 深さ | 明白な事実を超えた、洞察や興味深い情報があるか |
| 推薦したくなるか | ブックマークしたり、知人に共有したくなるページか |
| 書き手 | そのトピックをよく知る人が書いた、または確認したものか |
| 正確さ | 簡単に確認できる事実誤認が含まれていないか |
| 丁寧さ | 誤字や体裁の乱れが残っていないか |
Googleはあわせて、コンテンツの「誰が・どうやって・なぜ」を明らかにするよう求めています。誰が書いたのかが読む人に分かるか。AIによる生成を含む自動化を使ったのなら、それが読む人に分かる形になっているか。そして「なぜ」については、人の役に立つために作っている状態であるべきだとしています。検索順位を上げること自体を目的に置く作り方は、ここで注意を促されている側にあたります。
評価の軸として挙げられているのが、経験・専門性・権威性・信頼性の4つです。Googleはこのうち信頼性が最も重要で、他の3つは信頼性を支えるものだと説明しています。健康や家計、安全にかかわる話題では、この観点がとりわけ重く扱われます。
読む人がどの段階にいるかで、書くことが変わる
同じキーワードで訪れた人でも、置かれている段階はばらつきます。段階を取り違えると、内容が正確でも「自分向けではない」と判断されて離脱します。大きく3つに分けて考えると扱いやすくなります。
| 読む人の段階 | その瞬間の問い | ページで書くこと |
|---|---|---|
| 困りごとに名前が付いていない | これは何という問題なのか | 症状の言い換えと、原因の切り分け方 |
| 解決手段を比べている | どの方法が自分に合うのか | 条件ごとの向き不向きを並べた比較 |
| 依頼先を選んでいる | この会社に頼んで大丈夫か | 進め方、費用の考え方、断る条件 |
3つを1ページに詰め込むと、どの段階の人にも遠回りな記事になります。1ページ1段階を原則にして、段階をまたぐ移動はページ同士のリンクで支えるほうが、読む人の移動が短くなります。
自社のページがどの段階を担っているかは、見出しを眺めれば分かります。3つの段階の問いが混在しているなら、そこが分割の候補です。
読者目線で書くための5つの作業
ここからは実作業です。どれも特別な道具を必要とせず、原稿と向き合う時間の中で完結します。
1. 読者が実際に口にした言葉から始める
最初にやるのは、書き手の語彙を捨てる作業です。社内で使っている言い回しと、お客様が電話口で使う言い回しは、たいてい違います。「導入支援」と社内で呼んでいるものを、お客様は「使えるようになるまで手伝ってもらえるのか」と表現します。
手を動かす方法は単純です。直近3か月に受けた問い合わせや相談の記録を開き、お客様が使った言葉をそのまま20個ほど書き出します。営業担当や受付が耳にしている言葉も集めます。この20個が、記事の見出しと本文の語彙の元になります。
この作業の効きが大きいのは、検索する人も同じ言葉を使うからです。業界の正式名称でページを埋めると、正式名称を知っている人にしか届かなくなります。
2. 見出しを問いの形にする
「はじめに」「サービスの特長」「まとめ」といった見出しは、目次から中身を推測できません。読む人は目次を見て、自分の疑問が扱われているかを判断します。そこに答えが予告されていなければ、その先は読まれにくくなります。
| ありがちな見出し | 読む人から見た状態 | 書き換えの方向 |
|---|---|---|
| 「はじめに」「まとめ」だけ | 何が書いてあるか目次から判断できない | その節で答える問いを見出しに入れる |
| キーワードを詰め込む | 日本語として不自然で、読む気が削がれる | 助詞を補い、1つの問いとして読める形にする |
| 体言止めの羅列 | 内容の予測がつかず、拾い読みされない | 「〜する方法」「〜が起きる理由」と動きを入れる |
| 見出しの階層がずれている | 話の大小関係が伝わらない | 節はH2、その中の論点はH3で揃える |
見出しを問いの形にすると、副次的な効果もあります。書き手自身が、その節で何に答えるのかを決めてから書き始めることになるため、話が脇道へそれにくくなります。
3. 見出しの直下で、その問いに答える
見出しで問いを立てたら、次の1文か2文で答えを言い切ります。背景説明や前置きは、答えのあとに回します。「この点については以下で詳しく解説します」という書き出しは、答えを先送りにする分だけ読む人を待たせます。
この順番は、検索エンジンや生成AIが記事の一部分を切り出して使う場面でも効きます。見出しと答えが隣り合っていれば、そこだけを取り出しても意味が通るからです。読む人のためにやったことが、そのまま機械にも読みやすい形になります。
4. 条件で変わる話は表に落とす
「規模によって変わります」「状況によります」で終わる説明は、読む人にとって答えになっていません。条件によって答えが変わるなら、条件の軸を決めて表に並べます。軸は2つまでにすると、読む人が自分の位置を見つけやすくなります。
表にすると、書き手側でも曖昧な部分が浮かび上がります。埋められないマスが出たら、そこが自社でまだ言語化できていない部分です。無理に埋めず、埋められる範囲だけを書いたほうが誠実な記事になります。
5. 自分の現場で確かめた範囲だけを書く
読む人の役に立つ記事とそうでない記事を分けるのは、文章の巧拙より、書いてある中身が確かめられたものかどうかです。ウェブ上の情報を並べ替えただけの記事は、読む人が別の場所でも読める内容にとどまります。
自社の現場にあるものを探します。よくある失敗、見積もりが膨らむ典型的な条件、着手前に確認しておくと後で困らない項目。こうした情報は、その仕事をやっている人にしか書けません。Googleが挙げている「独自の情報や分析があるか」という問いに、正面から答えられる部分でもあります。
冒頭の数行で何を書くか
記事の冒頭は、読む人が「自分向けの記事かどうか」を判断する場所です。ここで自己紹介や業界の一般論を並べると、判断材料を渡さないまま時間だけを使わせることになります。
冒頭に置くべき要素は3つです。読む人が抱えている状況の描写、この記事で答える問い、そして読み終えたときに手元に残るもの。この3つを合わせて4行から6行で書きます。長い導入は、それ自体が離脱の原因になります。
状況の描写には、自社の推測を持ち込まず、実際に受けた相談の言葉を使います。「売上が伸び悩んでいませんか」という一般的な問いかけより、「見積もりを出したあとに連絡が途絶える」という具体的な状況のほうが、当てはまる人には強く刺さります。
具体例の作り方
具体例があると記事は読みやすくなります。ここで起きやすい事故が、実在しない事例を作ってしまうことです。「ある工務店では問い合わせが1.5倍になりました」という一文は、書くのは簡単ですが、裏付けを求められた瞬間に答えられません。
安全な具体例の作り方は2つあります。1つは、自社が実際に扱った案件を、許可を得たうえで書くこと。もう1つは、特定の誰かの話にせず、一般的な状況として書くことです。
| 書き方 | 例 | 裏付けの要否 |
|---|---|---|
| 実在の事例として書く | 「◯◯様では3か月で問い合わせが2倍に」 | 本人の掲載許諾と実測値が要る |
| 一般的な状況として書く | 「見積もり後に連絡が途絶える場面では」 | 裏付けは不要で、書き手の観察で足りる |
| 架空の事例として書く | 「ある企業では売上が2倍に」 | 裏付けを出せないため、使わない |
お客様の事例を載せる場合は、掲載の可否を毎回確認します。以前に許諾をいただいた相手でも、内容が変わるたびに確認するのが安全です。実名や写真の扱いは、相手の立場によって判断が変わります。
数字を使うときの作法
説得力を出そうとして数字を入れたくなる場面があります。ここには注意が要ります。出典をたどれない数字は、書いた瞬間は説得力があるように見えて、読む人が確かめようとした瞬間に信頼を失わせます。
| やりがちな書き方 | 何が問題か | 代わりにどうするか |
|---|---|---|
| 「約85%の人が実践している」 | 誰が、いつ、何人に調べたのかが無い | 調査名と年を書ける数字だけを使う |
| 「ある企業では売上が2倍に」 | 実在の裏付けを確認できない | 一般的な傾向として、数字なしで書く |
| 「10年以上の経験を持つ筆者が」 | 書き手の実像と食い違うと信頼を損なう | 実際の担当者名と経歴を明記する |
| 統計に企業名だけ添える | 報告書名と年が無く、たどれない | 報告書名・年・調査対象まで書く |
数字を書けない場面では、数字なしで一般原則として書きます。「多くの場合」「経験上こうなりやすい」という書き方は、根拠のない数字より正直で、読む人を裏切りません。
読みやすさを支える細かい作法
中身が整ったら、目に入る形を整えます。ここは好みが分かれる部分もあるため、正解というより傾向として扱ってください。
1つの段落に入れる話は1つにします。段落が長くなってきたら、それは複数の話が混ざっている合図です。文の長さも同様で、1文に条件と結論と例外を詰め込むと、読み返さないと理解できない文章になります。
専門用語は、初出のところで言い換えを添えます。言い換えられない用語は、そもそも読む人に必要な用語かどうかを疑います。社内の共通語をそのまま持ち込んでいるだけの場合が、思いのほか多くあります。
太字や色文字は、数を絞るほど効きます。1ページに何十か所も強調があると、どれも強調として働かなくなります。強調したい箇所が多いと感じたら、構成そのものを見直す合図と受け取ってください。
タイトルの決め方
タイトルは、検索結果に並んだ状態で読まれます。つまり、他の記事と並べて比べられる場所です。ここで効くのは表現の巧みさより、扱う問いの輪郭がはっきりしていることです。
手順にすると3段階です。まず、記事が答える問いを1文で書きます。次に、その問いに含まれる条件を足します。最後に、読む人が使う言葉へ置き換えます。「ウェブサイトの改善方法」という漠然とした形から、「見積もり後に連絡が途絶えるときに、サイトのどこを直すか」という形へ寄せていく作業です。
| 整える観点 | 目安 |
|---|---|
| 扱う問いが入っているか | タイトルだけで、記事が答えることを言い当てられる |
| 読む人の言葉になっているか | 社内の正式名称に頼らず、相談で出た言い回しを使う |
| 誇張が入っていないか | 本文で裏付けられる範囲の言葉にとどめる |
| 末尾が切れないか | 画面の狭い端末でも要点が残る位置に主語を置く |
タイトルで約束したことと本文の中身がずれていると、読む人はすぐ離れます。開いてもらう技術より、開いたあとに裏切らない構成のほうが、結果として長く効きます。
小さな画面で読まれる前提で整える
多くの記事は、机の前で書かれて、移動中の小さな画面で読まれます。この落差が、書き手の想定と読まれ方を食い違わせます。書き終えたら、必ず自分の携帯端末で開いて読み返します。
小さな画面で目立つのは、段落の長さと表の横幅です。画面いっぱいに文字が詰まった段落は、それだけで読み飛ばされます。列数の多い表は横にはみ出し、最後の列が読まれません。表は3列までを目安にすると、多くの端末で収まります。
画像や図も同じで、細い文字を入れた図は縮小されると読めなくなります。図の中の文字は、大きく、数を絞って入れます。
書き終えたあとの点検
| 点検する項目 | 確認の方法 |
|---|---|
| 見出しが問いになっているか | 目次だけを読んで、記事の中身を人に説明できるか試す |
| 見出しの直下で答えているか | 各見出しの次の1文だけを拾い読みする |
| 出典のない数字が残っていないか | 数字を検索し、すべてたどれるか確かめる |
| 書き手が誰か分かるか | 記事の署名と、その人の経歴が載っているか見る |
| 自社にしか書けない部分があるか | その段落を他社の記事に貼っても成立するか試す |
| 声に出して読めるか | 音読し、息が続かない文を分割する |
最後の「他社の記事に貼っても成立するか」という点検は、いちばん効きます。貼り替えても成立する段落は、読む人にとって他の場所でも読める内容です。そこを自社の現場の話に置き換えていくと、記事の性格が変わります。
読み終えたあとの一歩をどう置くか
読者目線で書かれた記事は、読み終えた時点で読む人の理解が一段進んでいます。そこで次の一歩を示さないと、せっかく進んだ理解が行き場を失います。
置き方の原則は、記事の結論と一歩の中身を揃えることです。「自社で点検する手順」を書いた記事の末尾に、いきなり契約の申し込みを置くと、段差が大きすぎて踏み越えられません。点検の記事なら、点検表の配布や、点検結果を持ち込んで相談できる場のほうが自然につながります。
一歩は1ページに1つだけ置きます。複数の行き先を並べると、読む人はどれを選ぶかという新しい判断を迫られ、結果としてどれも選ばなくなります。
公開したあとに何を見るか
記事は公開した時点で完成しません。実際に読まれ方を見て、書き直す材料を集める段階が続きます。ここで見る指標は、多いほど良いわけではなく、判断に使うものだけに絞ります。
| 見る指標 | この数字が示すこと | 下がっていたときの打ち手 |
|---|---|---|
| 検索結果での表示回数 | そもそも検索の対象に入っているか | 扱う問いと見出しの言葉を見直す |
| 表示に対するクリックの割合 | タイトルと説明文が中身と合っているか | タイトルを問いの形に書き換える |
| 読み進められた深さ | 冒頭と中盤で期待が裏切られていないか | 冒頭の3要素と見出し直下の答えを直す |
| 次の一歩への到達 | 結論と一歩がつながっているか | 一歩の中身を記事の結論に合わせる |
見る周期は月単位にします。週単位で上下を追うと、季節や曜日の揺れを成果の変化と取り違えます。1本の記事を直したら、次の判断までは1か月ほど置くのが目安です。
読者目線とSEOの関係
読者目線で書くことと検索エンジン対策は、対立する作業として語られることがあります。実際には、Googleが公開している判断基準を読むかぎり、両者は同じ方向を向いています。Googleは、検索エンジンからの訪問を集めるために作られたコンテンツと、読む人のために作られたコンテンツを区別すると明記しています。
「たくさんのトピックについて大量に作り、どれかが当たることを期待する」「広範囲の自動化で多数のトピックを量産する」といった作り方は、Googleが注意すべき兆候として挙げているものです。この記述は、量で押す方針の分が悪くなっていることを示しています。
検索順位を上げる手段として読者目線を採用すると、たいてい中途半端になります。順位のために読む人を思いやるという構図には無理があるからです。順序を逆にして、読む人の疑問に答えることを目的に置くと、結果として検索エンジンの判断基準とも噛み合います。
よくある質問
記事は何文字くらい書けばよいですか
目安となる文字数はありません。Googleも文字数を評価基準として挙げていません。扱う問いに答えきるのに必要な分量が答えになります。文字数を先に決めると、水増しの文章が混ざり込みやすくなります。
専門用語はどこまで避けるべきですか
読む人が検索に使う言葉は残し、社内でしか通じない言葉は言い換えます。判断に迷ったら、その用語を知らない人に読んでもらい、引っかかった箇所を直すのが確実です。
書き手の名前は出したほうがよいですか
Googleは「誰が書いたのかが読む人に自明であるか」を点検項目に挙げています。担当者名と、その人がなぜその話を書けるのかが分かる経歴を添えるのが基本になります。実態と違う肩書きを付けると、かえって信頼を損ないます。
古い記事は書き直すべきですか
中身が古びた記事は、放置するより手を入れたほうが読む人のためになります。優先順位は、閲覧数が多い記事から付けます。誰にも読まれていない記事の手直しに時間を使うと、労力に対する見返りが小さくなります。
更新の頻度はどれくらいが適切ですか
頻度そのものに正解はありません。書ける中身が溜まったときに出す、という順序が健全です。頻度を先に決めると、埋めるための記事が混ざり、サイト全体の印象を薄めます。1か月に1本でも、答えきった記事であれば役割を果たします。
同じテーマで何本も書くと共倒れしませんか
扱う問いが重なっていると共倒れが起きます。防ぎ方は単純で、書く前に既存記事の見出しを一覧にして、同じ問いを扱っていないか確かめます。重なっていたら、新しく書く代わりに既存記事へ加筆するほうが確実です。
AIに記事を書かせてもよいですか
Googleは自動化やAI生成の利用そのものを禁じてはおらず、それが読む人に分かる形になっているかを問うています。あわせて、簡単に確認できる事実誤認が無いかという点検項目も挙げています。生成された文章をそのまま公開せず、事実関係を人の目で確かめる工程が要ります。
まとめ
読者目線という言葉を、点検できる形に置き換えました。読む人がその瞬間に抱えている問いに、その場で答えている状態。これが今回の定義です。
やることは5つでした。読む人が実際に使った言葉から始める。見出しを問いの形にする。見出しの直下で答える。条件で変わる話は表にする。自分の現場で確かめた範囲だけを書く。どれも文章力を必要とせず、手順として実行できます。
まずは既存の記事を1本開いて、目次だけを読んでみてください。目次から中身を人に説明できないなら、そこが最初に手を入れる場所です。
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